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泥棒は片道切符で(徳間書店)

部屋のキーを出して、ドアを開けようとすると、「失礼ですが」と、声をかけて来た男がいる。パリッとしたスーツの、初老の紳士である。「こちらの支配人さんですね」と、淳一は言った。「さようでございます」と、頭を下げ、「ゆっくりとご静養中のところ、誠に恐れ入りますが・・・・」「何です?」
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群青色のカンバス(光文社)

いやー、楽しみにしていた『杉原爽香シリーズ』の続編だ。・・・・爽香の中学の担任だった先生に、〈今、S学園高校ブラスバンド部の合宿に来ている〉との手紙が、爽香から届いた。爽香はこの春、中学を出て、受験したS学園高校へ入った。先生はもちろん元の中学校で、今年は一年生の担任となり、新しく四十人の子供たちの相手をしている。
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三姉妹探偵団6 危機一髪篇(講談社)

「---その刑事は、何という男だ?」「国友です」「国友・・・・知らんな」と、組長は首を振った。「若い奴です。しかし、親分が脱獄したので、警察も国友が狙われることは予期しているでしょう。どこかへ隠すかもしれません」「勝手に隠れりゃいい」と、組長は手を振った。「俺はな、若頭。---あんな息子に育てた自分が情けない。
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三毛猫ホームズのプリマドンナ(角川書店)

いやな予感がしたのである。「大体だな---」片山義太郎は言った。「人を選ぶってことを知らないんだ、うちの課長は。お前だって、そう思うだろう?ともかく、面倒な仕事があると、みんな俺に押し付けりゃいいと思っている」すっかりむくれている。片山刑事は続けて、「そりゃ、課長が俺のことを嫌っているとは思わないさ。
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殺人を呼んだ本(双葉社)

〈野々宮図書館---誰でも自由にお入り下さい〉〈入るな!立入禁止〉二枚の、相反する札の前で、彼女はどうしていいか分からず、しばらく立ったままだった。・・・・「失礼します」と、声を出してみた。「どなたかいらっしゃいますか」大声を出したつもりが、実際は蚊の鳴くような---というほどなくても、
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ぼくが恋した吸血鬼(講談社)

やっぱ、吸血鬼って、いるんですね。・・・・そう。---大丈夫。これで鍵さえ開いていれば・・・・。やっと玄関のドアまで来た。バケツを下に置き、ノブをつかんで、そっと回してみる。開いた!やった!ドアを半分開けて、彼女は、バケツを手に取った。その瞬間、目の前でドアが目に見えない糸で引かれたかのように、いきなり閉じた。
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二階の沈黙(角川書店)

あなた・・・・。一人息子・・・・。三人の生活を、何とかして取り戻さなくては。そのためには---他に方法はない。覚悟を決めていた。奥さんは台所へ行って、肉切り包丁を取り出した、先が尖って、切れ味も鋭い。充分だろう。念のため、少し刃先を研いだ。それを右手に持って、ゆっくりと階段の下へ行き、二階を見上げる。
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静かな町の夕暮に(講談社)

「---今ね。校長室にお客だったの」「へえ」「私、ちょうど職員室に行ったら、捕まっちゃって、お茶出してくれ、って頼まれたんだ」と、同じ演劇部の友だちは、座り込んで、本格的に話し込む姿勢。仕方なくこっちも本格的に聞くことにする。「で、お茶持ってったら、話が耳に入って来たの。客ってねえ、映画のプロデューサーだったのよ」
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哀愁時代(角川書店)

課長は両手を握り合わせて、「本当に自殺したんですか?」「それを調べているんですよ」「というと---」「旅館には、遺書らしいものはありませんでした。女性はたいてい遺書を残すものですがね」「じゃ、事故ではないんですか」「それも考えました」と、刑事は肯いて、「しかし、どう見ても雪の山の中へ、ごく普通の服装で、自分から入って行ったとしか思えないんですよ」
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危険な相続人(角川書店)

「あと五分・・・・」と彼女は呟いた。さて---彼女と別れて、夢見心地のまま、赤いスポーツカーを走らせている彼氏・・・・。と、後ろでクラクションが鳴った。「何だよ・・・・」彼氏は、せっかく彼女とのラブシーンの甘い思い出に浸っているところを邪魔されて、渋い顔で、バックミラーに目をやった。