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「あと五分・・・・」と彼女は呟いた。さて---彼女と別れて、夢見心地のまま、赤いスポーツカーを走らせている彼氏・・・・。と、後ろでクラクションが鳴った。「何だよ・・・・」彼氏は、せっかく彼女とのラブシーンの甘い思い出に浸っているところを邪魔されて、渋い顔で、バックミラーに目をやった。車が一台、ピタリと、彼氏のスポーツカーの後ろについて来ている。またクラクションが鳴る。「ちえっ、うるさいなあ」彼氏は、少し車をわきに寄せた。・・・・その車はグンとスピードを上げると、彼氏のスポーツカーのわきをすり抜けるようにして追い抜いた。と---突然、斜めに突っ込むようにして、急ブレーキをかけたのである。・・・・車から飛び出して来た男が、ダダッと駆けて来たかと思うと、「静かにしろ」彼氏の前に、黒々と冷たい銃口があった。・・・・「降りろ」マスク越しに、ちょっと低く抑えた声が言った。・・・・彼氏が、素直にスポーツカーから出ると、こわごわ両手を上げた。「お金は・・・・あんまり持ってないんだ」「歩け」「え?」「早くしろ!」彼氏は、あわてて、言われるままに、歩きだした。四、五十メートル歩いただろうか、「止まれ」と命令されて、足を止めると、いきなりガッツン、と頭を殴られ、そのまま彼氏は引っくり返って気を失ってしまった。・・・・何を盗られたんだろう?財布、カード。・・・・「あれ?」ポケットを探ってみると、ちゃんと、札入れが入っている。・・・・「何だ、一体」彼氏は首をひねった。---わざわざホールドアップして、人を気絶させておいて、それで何も盗らなかったなんて。車かな?あの一千万円するスポーツカー・・・・。いや、スポーツカーが向うの方に、ちゃんと停まっているのも見えた。・・・・スポーツカーの方へ歩きだした。とたんに---スポーツカーが爆発した。・・・・やがて入って来たのは、スマートに上等なスーツを着こなした青年、彼女の個人秘書である。「どうしたの?こんな時間に」と、彼女は素気なく、「忙しいんでしょ。いいのよ、私のことなど気にしないで」「明日の予定が少し変更になりましたので、社長にお伝えしようと思いまして」個人秘書は、事務的な口調で言ったが、---この声、あのスポーツカーの彼氏に拳銃を突きつけた男の声とそっくりだ・・・・。彼女は、二十一歳だが、親から相続して、二十に上る企業のグループのトップを切り盛りしているが、付合っている相手を殺したくなるくせがあるのだ。先代の社長から、彼女のことを頼む、と言われている個人秘書としては、何とか彼女が人殺しをしないように邪魔するしかないのだ。この個人秘書が、人殺しを邪魔しながら、グループ企業のごたごたの処理を行っていくのだ。この秘書大変なのだ!


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