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課長は両手を握り合わせて、「本当に自殺したんですか?」「それを調べているんですよ」「というと---」「旅館には、遺書らしいものはありませんでした。女性はたいてい遺書を残すものですがね」「じゃ、事故ではないんですか」「それも考えました」と、刑事は肯いて、「しかし、どう見ても雪の山の中へ、ごく普通の服装で、自分から入って行ったとしか思えないんですよ」「じゃあ、道に迷ったとか---」「道ではない所を歩いているんです。天気もよくて、霧もなく、迷うはずがないんです」「なるほど」課長は肯いて、「するとやはり---」「自殺という線が濃厚でね」刑事は、手帳を閉じた。「---どうです、ホテルで、彼女、それらしいことを言っていませんでしたか」「それらしいこと?」「つまり---誰かに振られたとか、何かひどく失望しているとか・・・・」「さあ・・・・」課長は頭をかいて、「専ら、私のことを話していたんで」「あなたの?」「ええ、妻と別れてましてね。---彼女は、奥さんと話してみるべきだ、と言っていました」「ほう」「明日、奥さんにきっと電話しなさい、としつこいくらい、言ってましたね」「どうしてでしょう?」「さあ」と、首をかしげて、「私が一人住まいが侘しいとその前に話してたせいでしょう」「あなたのことを心配していた、と?」「そうです」課長は肯いた。「---いい子でした。真面目で、よく働いたし。無断欠勤したとき、心配で、アパートまで行ったんですよ、同じ課の者が」「まさか、旅に出ているとは---」「思いませんでした。---みんな、呆然としていますよ」「なるほど」刑事は、手帳をポケットに入れた。「刑事さん」「何です?」「もし---差し支えなければ、うかがいたいのですが」と、課長は言った。「彼女には恋人がいたんですか?」「---何人かに話は聞きましたよ」と、刑事は、肩をすくめて、「親友の女の子、そのボーイフレンド、子供のころから彼女を知っているという人・・・・。みんな、すばらしい子だった、と言っていますよ」「そうですか」「それが、必ずしも、死んだ人間の悪口は言いたくない、という様子じゃないんですね。本当にそう信じている、という感じで」「しかし---それでも、彼女は---」「自分の命を絶ったわけです。分かりませんね。他の人間には、心の中まで分かりませんからな」「全くです」課長は肯いた。「全くですね」「どうも、お仕事中、お邪魔しました」と、刑事は立ち上がった。・・・・刑事は、ふと気付いた様子で、「それで、電話したんですか?」「え?」「奥さんに、ですよ」「ああ。---ええ、しました。彼女の告別式には、一緒に行くつもりです」「すると・・・・」「復縁することになりそうでして」と、課長は照れたように言った。「そうですか。それはよかった。・・・・哀愁時代、彼女に何があったんでしょうか?


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