禁じられたソナタ(小学館)

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先ずは、本の末尾にあった『解説』の言葉を借ります。〈『禁じられたソナタ』は、・・・・赤川氏の持ち味がよく生かされたホラー・ストーリーの秀作である。読者のなかには、ホラー・ストーリーの「ホラー」と、ホラ話やホラ吹きの「ホラ」を混同している人もあるようだが、この二つは、本来まったく別の言葉である。「ホラー」は英語のhorrorをカタカナで表記したもので、「恐怖」とか「戦慄」といった意味を持っている。だから、ホラー・ストーリーは一般に「恐怖小説」または「怪奇小説」と訳される。ひとことでいえば、「こわい話」のことである〉・・・という通り、『禁じられたソナタ』は、赤川氏の得意の一つ(得意が沢山ありますが)のホラー・ストーリーで、こわーーーい話なんです。・・・ドアが開いた。「遅くなって」と、姉が言った。妹は、チラッと姉の方を見る。---これ以上早くなんて、来られなかったじゃないの!「どうぞ」白衣の看護婦が、無表情に、先に立って歩いて行く。・・・・「具合は?」と、姉の訊く声に、妹はハッと我に返った。「まだ意識はございます」と、看護婦が答えていた。「ただ、今夜一杯はとてももつまい、と・・・・」「そう」姉は肯いた。・・・・「お嬢様方が---」「孫だ。孫娘だ。間違えるな」と、祖父の声は、いつも通りに皮肉めいて、妹には聞こえた。本当に危いのだろうか?こんなにはっきりしゃべれるのに・・・・。「学校は?」と、姉が訊いた。「続けるとも。---お前を呼んだのは、そのためだ」「私?」「お前が校長と理事長を継いでくれ。---お前は、音楽より経営に向いた娘だからな」「ご挨拶ね」と、姉は苦笑した。「でも、いいわ。嫌いじゃないから、そういうことは」・・・・「妹と二人にしてくれんか」「ええ」姉が、足早に部屋から出て行く。・・・・「ベットの、マットレスの下へ手を入れてごらん。---私の腰の下あたりだ」妹は、涙を拭うと、マットレスの下へ手をさしこんだ。少し奥までさし込むと、何かが手に当たった。「何か本みたいな・・・・」「出してごらん」力をこめて引っ張ると、その薄い本のようなものは、スッと出て来た。「楽譜?」「そうだ」古ぼけた楽譜だった。妹は、表紙をめくって、しばらくその楽譜に見入っていたが、やがて、ゆっくりと顔を祖父の方に向けた。「お祖父さん!これは・・・・」「それが、〈送別のソナタ〉だ」と、祖父は言った。妹の手が震えた。「これを---私に?」「そうだ。しかし---」突然、祖父は、信じられないような力で、妹の手をつかんだ。そして、落ちくぼんだ目を、じっと見開いた。「いいか、その曲を弾いてはいけない。特にこの学校の中では、決して弾いてはいけない!分かったか!」その声は、体中の残った生気総てを絞り出したもののようだった。・・・この楽譜を巡って、恐ろしい話が、展開するのです・・・。こわーーー!

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