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◆七番目の花嫁
ちょっとヨーロッパ風に、店の中から開け放して道にはみ出すように作られたカフェテラスで、三人はティータイムと洒落ていた。だからドン・ファンも亜由美の足下でのんびり寝そべっていられたのである・・・・。隣のテーブルのその女性---ドン・ファンの泣き声に気付いて、「あら、可愛い。---何ていうの?」と、声をかけて来た。「ドン・ファンです」と、亜由美が答える。「ワン」「さすがに二枚目ね」「気を付けて下さい」と、聡子が注意した。「うぬぼれの強い犬ですから。すぐ女の子のスカートに頭を突っ込むんです」「面白い!」と、その女性は楽しげに笑った。その笑いが、いかにも若々しい。「---どうしたの、ドン・ファン?」亜由美は、ドン・ファンがふと緊張しているのに気付いた。カフェテラスだから、当然道を行く人が、テーブルのすぐわきをかすめることもある。皮のジャンパー姿の男が、足早にやって来ていた。その女性が一人でいるテーブルのわきをすり抜けるように---。ドン・ファンが、びっくりするような素早い動きで、その男の前にパッと飛び出した。「ワッ!」その男がドキッとして飛び上った。何かが道に落ちて、金属音をたてる。「ナイフだわ!」亜由美が椅子をけって立ち上がった。革ジャンパーの男が、駆け出す。亜由美としても、追いかける気にもなれないほど、凄い勢いで、男は逃げ去ってしまった。「---何ごと?」と、聡子がポカンとしている。ドン・ファンが、ナイフをくわえて来る。「---あの男、刃を出したナイフを、ポケットに隠してたんだわ」「危ないじゃないの」「そう、たぶん。通りすがりに、この店の誰かを---」「私だわ」と、隣のテーブルの女性が言った。「というと・・・・」「私を殺そうとしたんだわ」その女性はしっかりとした調子で言った。ショックを受けた様子でもない。「何か狙われる覚えでも?」好奇心がうずいて、つい亜由美は訊いてしまった。「ええ」と、その女性が肯いて、「私が結婚するから」聡子が、目をパチクリさせて、「結婚すると殺されるの?」と、言った。「じゃ、私、不倫するだけにしとこ」「ワン」と、ドン・ファンが鳴いて---。これが今度の事件との出会いだったのである・・・・。赤川次郎の登場人物は、みんな、何でこう事件が好きなんでしょうかね?ただ、お茶しているだけで、事件が飛び込んでくるのです。まあ、仕方ないか?でもドン・ファン、結構頑張ってますね。もしかしたら、三毛猫何とかより、できるかもしれませんね?それと、亜由美のお父さんとお母さん、面白い、いい家族ですね。ちょっとヨーロッパ風に、店の中から開け放して道にはみ出すように作られたカフェテラスで、三人はティータイムと洒落ていた。だからドン・ファンも亜由美の足下でのんびり寝そべっていられたのである・・・・。隣のテーブルのその女性---ドン・ファンの泣き声に気付いて、「あら、可愛い。---何ていうの?」と、声をかけて来た。「ドン・ファンです」と、亜由美が答える。「ワン」「さすがに二枚目ね」「気を付けて下さい」と、聡子が注意した。「うぬぼれの強い犬ですから。すぐ女の子のスカートに頭を突っ込むんです」「面白い!」と、その女性は楽しげに笑った。その笑いが、いかにも若々しい。「---どうしたの、ドン・ファン?」亜由美は、ドン・ファンがふと緊張しているのに気付いた。カフェテラスだから、当然道を行く人が、テーブルのすぐわきをかすめることもある。皮のジャンパー姿の男が、足早にやって来ていた。その女性が一人でいるテーブルのわきをすり抜けるように---。ドン・ファンが、びっくりするような素早い動きで、その男の前にパッと飛び出した。「ワッ!」その男がドキッとして飛び上った。何かが道に落ちて、金属音をたてる。「ナイフだわ!」亜由美が椅子をけって立ち上がった。革ジャンパーの男が、駆け出す。亜由美としても、追いかける気にもなれないほど、凄い勢いで、男は逃げ去ってしまった。「---何ごと?」と、聡子がポカンとしている。ドン・ファンが、ナイフをくわえて来る。「---あの男、刃を出したナイフを、ポケットに隠してたんだわ」「危ないじゃないの」「そう、たぶん。通りすがりに、この店の誰かを---」「私だわ」と、隣のテーブルの女性が言った。「というと・・・・」「私を殺そうとしたんだわ」その女性はしっかりとした調子で言った。ショックを受けた様子でもない。「何か狙われる覚えでも?」好奇心がうずいて、つい亜由美は訊いてしまった。「ええ」と、その女性が肯いて、「私が結婚するから」聡子が、目をパチクリさせて、「結婚すると殺されるの?」と、言った。「じゃ、私、不倫するだけにしとこ」「ワン」と、ドン・ファンが鳴いて---。これが今度の事件との出会いだったのである・・・・。赤川次郎の登場人物は、みんな、何でこう事件が好きなんでしょうかね?ただ、お茶しているだけで、事件が飛び込んでくるのです。まあ、仕方ないか?でもドン・ファン、結構頑張ってますね。もしかしたら、三毛猫何とかより、できるかもしれませんね?それと、亜由美のお父さんとお母さん、面白い、いい家族ですね。
◆帰らざる花嫁
いきなり手首をギュッとつかまれたと思うと、亜由美は、ガシャッ、と手錠をかけられていた。周囲は唖然としていた。---何の冗談?笑っている子もいたし、興味津々という顔で眺めている子も。「あのね」と、亜由美はその男をにらみながら、「私、遊んでいるヒマ、ないんですけど」「こっちだってそうだ」と、男は言った。「警察の者だ」確かに、警察手帳を見せたところを見ると、本物の刑事らしい。しかし、ここは真昼間の喫茶店で、しかも同じ大学の子が一杯。そんな所で、身に覚えのないのに、手錠をかけられちゃ、亜由美としても、かなわない。「一体何だっていうんですか?左側を歩いたとか、横断歩道じゃない所を渡ったとか---」「それくらいのことで、手錠までかけるか」と、刑事は言った。「君はO.K.という女性を知っているな」「もちろん」「彼女を殺した容疑だ」亜由美は唖然とした。---店のあちこちでも、「エーッ!」という声が起こる。「O・K.が---見つかったんですか?」と、亜由美は訊いた。「いや、まだだ。君が死体を隠したんだろう?」亜由美は、やっよ怒りがこみ上げて来た。いや、亜由美の怒りは、活火山の爆発みたいなもんで、「こみ上げる」なんて生やさしいものではない。「死体も見付かっていないのに、何で殺したなんて言うのよ!逮捕状はあるの、逮捕状は?」「いや、それは---」「逮捕状もなしに手錠をかける、っていうのは、どういうことよ!」これには、一緒にいる聡子はもちろん、店内の学生たちが、みんな同調した。「そうよ、横暴だわ!」「職権濫用よ!」「人権の侵害!」「訴えてやればいいわ!」「そうよ、裸にして放り出しちゃえ!」過激な意見も出て、刑事も真赤になって怒っている様子だったが、「分かった!---分かったよ」と、渋々手錠を外した。「逃げるなよ」「誰が!」「ともかく署まで一緒に来てもらう」「いいわよ」と、亜由美は立ち上がった。「聡子」「亜由美---」亜由美は、聡子の手をしっかり握って、「ここの払いはお願いね」と、言った・・・・。亜由美は、それから、思い付いて、「そうだ!聡子。殿永さんに」「OK!任せといて」「さて、行こうか」と、亜由美はポンと刑事の肩を叩いて、「迎えの車は?」---あれじゃ、刑事も気を悪くするわ、と聡子は思った。亜由美を乗せて、パトカーが走り去って行くと、聡子の知っている後輩の女の子が、「神田さん」と、やって来て、「塚川さんって、凄く落ちついているんですね」と、感心している。「そりゃ、慣れているから」と、聡子は答えてやった・・・・。おいおい、警察にしょっ引かれるのに、慣れちゃ困るだろ?でも、一体何があったんでしょうかね?


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