親しき仲にも殺意あり(集英社)

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「ある人物を護衛してもらいたい」と、捜査一課長が言った。「は?」ちょっとポカンとしていた女性刑事は、あわてて訊き返した。「護衛だ。組織に命を狙われている。幹部を三、四人は挙げられる重要な証人なんだ」「私が護衛するんですか?」女性刑事には、ちょっと意外な話だった。「そうだ。---いやか?」「いやじゃありませんけど・・・。でも、捜査一課の仕事では---」「それくらい分かっとる。俺だって、猫の手も借りたいときに、お前でも抜けられちゃ困る」女性刑事は、カチンと来た。「『お前でも』って、どういう意味でしょうか」「そりゃもちろん---そういう意味さ。ともかく、お前でなきゃいかんのそうだ」「なぜでしょう?」「俺が知るか」捜査一課長は、コーヒーをガブリと飲んだ。「向こうがお前を指名して来たんだ」「名指しで?」「指名料が入るかもしれんな」と、捜査一課長が笑った。「変な冗談はやめてください」・・・・。話は変わって、「どうしても消さなきゃならん。幹部の首がかかっているんだ」と、社長が言った。「分かりました」女性社員は静かに言った。「---すまんな。少し休ませてやりたいんだが」社長は、優しく言った。「他の奴には頼めんのだ」「信頼してくださってありがたいですわ」女性社員は、もう一度コーヒーを引き寄せて、ゆっくり飲んだ。「---特に難しい理由でも?」「警察が保護している。どこにいるか、まだつかめんのだ。刑務所や留置場ではないことは確かだが」「その男---男、ですね?」「男だ」「家族は?」「女房と子供が一人。---亭主がどこへ行ったかは知らんようだ。監視はつけてある」「分かりました。何か考えます」「これが書類だ」社長は、封筒を渡した。「いつも通り、見たら処分してくれ」・・・・。「---ただいま!」アパートの二階。ドアをトントンと叩いて、呼んだ。ドアが開いた。女性社員が、玄関に入ると、「逮捕する!」袋をかかえた手首に、ガチャッと手錠が鳴った。女性社員は目を丸くして---それから、「女性刑事じゃないの!」と、歓声を上げた。「お帰り!」女性刑事が笑いながら言って、手錠を外した。「商売道具を、こんなことに使っちゃいけないんじゃないの?」・・・・・。女性社員と女性刑事は、幼稚園以来、ずっと一緒で、家族よりも一緒にいる時間が長いのではないかという位の親友同士で、一人は、ライターとして働いていて、もう一人は、刑事だ。女性社員のライターは、表向きで、実は、腕利きの殺し屋なのだ。そして、今回消す相手を、なんと親友の女性刑事が、護衛しているのである。まさに『親しき仲にも殺意あり』なのであるのだ。どうなるのでしょうか?

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