ホームタウンの事件簿(新潮社)

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◆私語を禁ず
ホームタウンの事件簿は、郊外のニュータウンでの出来事をつづった七つの短編です。ニュータウンは、昭和の時代に東京都市圏・大阪都市圏の郊外を中心に、ニュータウンの建設が盛んに計画・実施されたもので、主にサラリーマンが移り住み、新たな都市を築いて行ったものである。と言うことで色々な出来事が起きるんですね。第一話は、近所付き合いがあまりよくない家族に起きた出来事だ。先ずは四歳になる娘が、幼稚園で滑り台から突き落されて怪我をした。そして次の日に、突き落したと思われる男の子が、行方不明になる。男の子は、夜になって、穴に落ちていたところを発見された。次に、旦那が毎日餌をあげていた、団地の広場の隅でだれかに飼われていた兎が死んだ。どうも、だれかにネコイラズなどを食べさせられて死んだらしいのだ。そんなことがあった後、旦那が仕事で団地の人たちと懇談会を開くことになり、皆を集めて旦那が挨拶を始めると、皆が席を立って帰ってしまった。旦那が、家に帰って愚痴を漏らすと、妻が男の子を穴に落とした、そして、旦那が兎を殺したとの噂が流れていることを聞かされる。そして新たな事件が発生するのだ。この家族の運命や如何に?? そうだよね、昭和はSNSなんて無かったので、井戸端会議が重要であったのだ。付き合いが悪く、この井戸端会議に出ていないと、いろんな噂が流されてしまうのだ。

◆お節介な競売
第二話は、ニュータウンの団地に住む人が、海外勤務になったので、現在使っている家財道具を競売にかける話しだ。明日自宅で競売をするとのチラシが、この一帯の郵便受けに入れてあったらしい。競売のお宅に行ってみると、競売開始時間はまだなのに、玄関が脱いだサンダルで埋め尽くされているのだ。競売する家の奥さんは、高級趣味でいい家財道具が揃っているらしく、近所の奥さんたちはやる気満々なのだ。実際に競売が始まり、飛ぶように家財道具が売られていく。知らせを受けた、その家の主人と奥さんが、部屋にやってくるとほとんどの物が売られてしまっていたのだが、主人は奥さんが、奥さんは主人が、勝手に競売にかけたと喧嘩が始まってしまう。どうも、離婚話が持ち上がっていて、家財道具を、どちらが引き取るかもめていたらしいのだが、いったいどういうことなのか? そして今度は、買った人達が持ち帰った家財道具から、以前団地の人達から盗まれた、バックや宝石などが出てきたことが判明し、奥さんが逮捕されてしまう。盗みと競売は、何か関係があるのでしょうか? そういえば、私も中国勤務から帰国する時に、中国で使っていた物を競売にかけたっけ。もちろんタダの競売ですが。

◆罪のある者の象徴
第三話は、団地の路上に駐車していた車に、ペンキが吹き付けられた話しだ。この団地の駐車場は、入居戸数の三分の一の分しか用意されていないので、路上に駐車している人が多いらしい。昭和は、機械式の立体駐車場は、余り普及していなかったんでしょうね。今は結構普及しているが、機械式の立体駐車場は、耐久年数があるらしく、建て替えの問題があり、大変みたいです。その路上駐車していた車二台にペンキが吹き付けられた事件が発生した。被害にあったのは、新婚三か月のエリート社員と母親と二人暮らしの中学校の先生だ。二人とも、通勤電車の殺人的混雑が嫌で、車通勤しているらしいのだ。私も、殺人的混雑の通勤電車で通っていましたので、気持ちは分かりますが、車は車で大渋滞があるので嫌です。大渋滞って、時間の無駄ですもんね。さらに次々と、ペンキ吹付の被害がでてきて、団地の駐車場確保組と路上駐車組に亀裂ができて、大問題になりかけてくるのだ。団地って、こういう問題が起きますよね。車通勤は、殺人的混雑の通勤電車が嫌だからって言ってますが、どうもそれだけではないようなのだ。このペンキ事件をきっかけに、車通勤の謎が明らかになっていくのだ。ちなみに私は、車通勤したことはありません。

◆ひとりぼっちの誕生日
第四話は、子供の友達を集めての誕生会を行う話だ。子供のころ、友達を集めての誕生会なんてやってたっけ? 記憶がない。誰は呼んで、誰は呼ばなかったなんて、もめごとの種になるのに、めんどくさー。八歳の女の子がいなくなった。両親と近所の人が捜しているが、夜中の二時になっても見つからないのだ。いなくなった女の子の母親は、実家が裕福で、幼稚園から大学までずっと同じ私立で過ごし何不自由なく育ってきた。今でも少々お金の使い方が派手であるが、それが普通だと思っているのだ。さらに娘には、ピアノ、絵画から英語、水泳、バレエ・・・と、稽古事をやらせている。毎日、やりくりに追われている他の主婦たちにとっては、面白くなく、浮いた存在なのだ。その女の子が、友達を集めての誕生会を開くことになり、三十人位に招待状を出したのであるが、誰も誕生会に来ないのだ。どうも、この家族を面白くないと思っている奥様方が、この家族について、いろいろ話をしていて、それがこの母親の耳に入り、誕生会の招待状を出さなかったらしいのだ。それを知った女の子が、いなくなってしまったのだ。今でもそうだが、奥様達の話しって、想像が入って、あることないことが、ごっちゃになってしまうので、怖いですよね。

◆副業あります
第五話は、会社が傾きかけた話しだ。私も、四十数年間、むかしで言う一部上場企業に勤めていたが、何回か傾きかけました。その都度、盛り返してくれたので、大事なく勤めあげることができました。よかった。この団地に住んでいる主婦たちは、家計の足しにするために、パートなんかで働いている人も少なくないらしい。その主婦たちに「パートで働くために、夕食の支度ができなくて外食しているんじゃ、却ってマイナスよ」なんて言っている主婦がいる。この主婦の旦那は、一流企業の部長で、優雅な暮らしをしているのだ。そんな旦那の会社が傾いた。旦那は、首にはならなかったものの、いわゆる窓際族になり収入が六割に減ってしまう。優雅な暮らしをしていた妻は、働かざるをえなくなってしまったのだ。でも見栄がある妻は、バスで片道一時間かけて、団地の人達が来るはずもないレストランで、子供や近所に隠して働くことにしたのだ。まあ、何とか頑張って働いていたのだが、窓際族に追いやられた旦那が心配なのだ。酒なんてほとんど飲まなかったのに、酔っ払って帰ってくるようになるのだ。そんな時に、娘が事故に合い、レストランで働いていたことが、皆にばれてしまう。さらに、新聞記事になり、叩かれるのだ。耐えられない妻は、悲惨な結果に向かってしまうのだ。この家族、今後どうなってしまうのでしょうか?

◆天からの声
第六話は、引っ越してきた人が、みんな半年ぐらいで出て行ってしまう団地の部屋の話だ。夜中の二時に三十代の男と六十にも手が届こうとしている男の喧嘩から始まる。奥さんが止めようとしているが、遂に手が出てしまったのだ。事の始まりは、三十代の男の家族の引っ越しからだ。部屋に掃除機をかけていると、足下にドンドンいう、妙な音がするのだ。そして、玄関のチャイムが鳴った。出てみると、六十ぐらいの少し頭の禿げ上がった老人が立っていて、「下からつついたのが分からないのか」「うるさいんだよ、ガーガーと掃除機なんか使われちゃ」ときたもんだ。それからというもの、子供が部屋で転んだと言っちゃ、うるさいと言われ、子供の泣き声、ドアの開け閉め、トイレの水を流す音がうるさいと、ドンドンやられるのだ。そして、冒頭の喧嘩につながるのだ。三十代の男は暴行罪で訴えられ、罰金刑で済んだが、会社をクビになり、奥さんはノイローゼで入院、結局引っ越すことになったのだ。そして、その部屋は空き家になり、次のカモを待つのである。いやー、こういうトラブルってありますよね。結構ニュースで、近隣のトラブルで殺人事件に発展したなんてやってます。私も気を付けなけれ、加害者も被害者にもです。

◆郵便物は宛先不明
第七話は、主婦売春の話です。別な団地の主婦売春の組織が摘発された。その組織の連絡用として、副業の案内のダイレクトメールが使われていた。別に普通のダイレクトメールに見えるのですが、連絡先の電話番号が書かれていて、その電話番号に、日付・時間・場所が、記されているのだ。なるほどね。スマホなんか、みんな持っていなかったので、苦労していたのですね。そして、そのダイレクトメールが、この団地の棟で落ちているのが見つかった。宛先が、水で濡れて消えていたが、この棟にも、売春組織の奥さんがいたと騒ぎになるのだ。「急に着るものが派手になって、化粧も濃くなった」「会社から家に電話をすると、いつも留守だった」「遅く帰って来た妻は、「デパートに行ってきた」と言っているが、手ぶらで帰ってきた」などと言って、自分の妻が、売春組織に入ったのではないかとの相談が、何件も自治会の役員のところに寄せられるのだ。確かに、デパートに行って、手ぶらで帰ってくる女性はいないですね。あやしい。気になって、奥さんを尾行したりする旦那までいる。そして、自分の妻が、売春組織に入っていたことの発覚を恐れて、あんあことする旦那まで出てきて、騒ぎは頂点に達するのだ。いやー、団地って盛りだくさんな出来事があるんですね。今の団地も同じなんですかね??

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