ミステリ博物館(角川書店)

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◆密室
ミステリ博物館は、その題通り、ミステリーでおなじみのテーマをそのまま抜き出したような題の7つの短編が納められている。第一話は、「密室」であるが、「密室」と言うよりも、「開室」殺人事件だ。探偵の真似ごとのワトソン役をやっている男が、ホテルのロビーでホームズ役の男を待っているときに、「殺人を見に来ないか?」こんな言葉を聞いてしまう。出元は、今日このホテルの結婚式に出席していたらしい二人の男の会話だ。好奇心を駆り立てたワトソン役が、二人の男の挙動を見ていると、そこに結婚式を挙げた新郎新婦が現れ、二人の男に何かに誘っているようなのだ。そこに待っていたホームズ役の男が到着し、「殺人を見に来ないか?」の話をしてやると、当然こちらも興味津々なのだ。すると、驚いたことに新婦が、ホームズ役とワトソン役に近づいてきて、挨拶をしたのだ。ホームズ役が、むかしこの新婦の家庭教師をしていたとのことだ。そして、新婦から、「人殺しがありそうなのです」と、本日行われる結婚祝いのパーティーに来るように依頼されるのだ。パーティーに行ってみると、このお屋敷にある四阿に新婚夫婦が初夜を過ごすと、翌日にはそのどちらかが死んでいるとの伝説を聞かされる。そして、新郎新婦が初夜を過ごしに、四阿に行くのである。そして翌日、奇怪な事件が発見されるのだ。果たして、ホームズ役とワトソン役は、この奇怪な事件を解決できるのでしょうか?? 

◆人間消失
第二話は、ハムレットを演じている劇団の話しだ。主演のハムレットを演じるのは、TVや映画ですっかりスターになった男優で、このスターを見に来た客で大盛況なのだ。しかし、心配事がある。某新聞の演劇批評なのだ。この批評を担当しているのは、謎の人物であるが、その批評は至って痛烈で、相手がどんなベテラン・大物であろうと、構わずにこき下ろすのだ。それが、見るべき所をちゃんと見ているだけに、批評は次第に注目されているのだ。そして、謎の批評家の批評が出た。主演のハムレットについては、〈意欲だけが空回りして、人気が実力の裏付けを伴わないと証明してみせた〉程度なのだが、相手役のオフェーリアについては、〈老醜のオフェーリアは新解釈か?〉〈この劇団には、若い女優がいないのだろうか?〉〈オフェーリア役の女優は、最初ハムレットの母親役の予定と聞くが、ハムレットの祖母役を新たに創作する必要がある〉と、コケ下ろされたのだ。たまったものではない。困った劇団長は、ハムレット役の男優に、謎の批評家に会って、あんな記事を書かないように交渉しろと命じたのだ。まあ、謎の批評家もひどすぎるが、間違ったことを行っているわけではないのであるが。あるルートを使って、ハムレット役の男優が、謎の批評家に会いにホテルの部屋に行くと、その部屋で、オフェーリア役の女優が、死んでいたのだ。この謎に、ハムレット役の男優たちが挑むのであるが、どうなることやら??

◆脱出
第三話は、脱出を得意としている脱出王マジシャンの話しだ。そうです、脱出と言えば引田天功(初代)、懐かしーーー。二代目も良かったですね。そういえば、三代目もいるとか?いないとか?噂になってますよね。そのマジシャンの妻が、お金持ちのドラ息子と浮気をし、マジシャンと別れてドラ息子と一緒になることになった。どうも、マジシャンは、えらく嫉妬深くて、それに妻が耐えられなくて別れたくなったらしい。そして、ドラ息子が住む別荘で、披露宴のパーティーが行われることになったのだが、そのパーティーに、マジシャンを招待してしまったのだ。これは何か起きますよね。心配になった妻が、探偵のまねごとをしている知り合いの二人をこのパーティーに招待して、監視させることにしたのだ。パーティーが始まり、何事もなく進んで行ったのであるが、ドラ息子がマジシャンに、部屋の脱出を持ちかけたのだ。もちろん、マジシャンが断るわけがない。やっぱりこう来るよね。マジシャンをロープで縛り、部屋に閉じ込めた。マジシャンは三分で脱出すると言っていたが、三分経ってもマジシャンは現れず、ドアを壊して部屋に入ると、マジシャンは、背中にナイフが突き刺さって、死んでいたのだ。密室殺人なのだ。この謎に、探偵もどきの二人組が挑むのである。

◆怪談
第四話は、怪談、そう幽霊が出たのです。幼稚園の先生、今もそうなんですけど、大変なんです。何が大変かっていうと、子ともたちの面倒よりも、先生同士の人間関係と母親たちの相手が大変なのである。主人公の先生は、大学を出てある幼稚園に二年いたが、園長と意見が合わずに辞めてしまった。その後、大学時代の友人の紹介で、新しい幼稚園に勤めることにしたのだ。そして、出園初日から幽霊に出くわしたのだ。幽霊は四歳ぐらいの男の子で、友人曰く、一年前に死んだ男の子の幽霊なのだ。その男の子は、公園のジャングルジムの中で、首の骨を折って死んでいたとのことだ。さらに、その三日後に、男の子の両親が、無理心中したとのことであった。なぜ、その男の子の幽霊が出たのか、気になった主人公の先生が、探偵のまねごとをしている叔父さんと共に捜査するのである。この探偵のまねごとをしている叔父さんは、第一話と第三話に出てきた探偵もどきの人らしい。シリーズものを狙っていたのか? 後三話残っているので、また出てくるのか確認してみます。さて、この男の子の幽霊は、いったい何だったんでしょうかね??

◆殺人予告
第五話は、夫が殺された妻の話しだ。結婚して五年、三歳の男の子と一歳の女の子を持つ女性は、何不自由なく暮らしていた。ところが、夫が、密輸に絡んで逮捕されてしまうのだ。夫は、証拠不十分で不起訴となったが、脱税分の追加徴収があり、マンションを売り、方々から借金をしてなんとか支払った。そして、郊外の一軒家を借りて、細々と暮らしていたのであるが、今度は、夫が何者かに殺されてしまうのだ。その一年後、夫宛の手紙が届いた。開けてみると、〈お前を殺してやる。待っていろ。必ず殺してやる〉と書かれていて、夫の殺人予告であったのだ。夫は、一年前に殺されているのに、どういうことなのか? 知り合いの青年に相談すると、古そうな手紙で、一年前に出した手紙かもしれない、そういうことに詳しい奴がいるので、調べてもらうと、手紙を青年に預けた。その後、今度は、女性自身の殺人予告の手紙が届くのだ。警察に相談すると、青年に預けた、手紙を確認することになり、青年のアパートを尋ねると、今度は、青年が殺されていたのだ。どういうことなのか? そして、ついに女性が襲われることに・・・・。さて、結末はいかに??

◆幽霊屋敷
第六話は、題の通り「幽霊屋敷」の話しだ。幽霊屋敷と言っても、一年前に建ったばっかりの高級マンションに幽霊が出るのだ。この高級マンションに住む金持の未亡人に、第一・三・四話に出ていた、探偵もどきのホームズ役とワトソン役が、招待された。幽霊は、声と音しか出さないので、幽霊の姿を見させてくれとの依頼なのだ。週末にマンションを訪れると、なんと、幽霊歓迎パーティーが行われていて、三十人近くの客が来ていたのだ。その客は、ジャーナリスト、新聞記者、TV局の人などマスコミ関係がほとんどで、この人たちの前で幽霊を呼んでくれとのことだ。そして、ワトソン役が、十二時に幽霊を呼び出すことになり、部屋の明かりを消して、秒読みが始まった。そして、時計が十二時を打ったところで、ワトソン役が頭を強打され気絶し、その後、銃声がして、金持の未亡人が殺されてしまったのだ。警視庁捜査一課の刑事も交えて捜査を開始すると、金持の未亡人の女性秘書の婚約者が、金持の未亡人に婚約を破棄されたことを恨んでいることが分かった。そして、幽霊歓迎パーティーで、婚約者が、「あんな婆あ殺してやる」と言っていたのを、探偵もどきのコンビが聞いていたのだ。早々婚約者を捕まえようとしたが、婚約者が逃げ、逃げる途中に階段から落ちて死んでしまった。一見落着に見えたのであるが、まだまだ先があるのだ。そうそう、幽霊の方は、どうなっちゃたんだ??

◆汚れなき罪
第七話は、無銭飲食をしようとした刑事の話だ。高級フランス店で男が食事をしているのだが、様子がおかしい。男は、オードブル、スープ、魚、肉、サラダを頼んでいるのだが、どれも一番値段が高いものなのだ。そして、明らかに生まれて初めて食べるものばかりのようで、ほとんど手をつけないものもある。そうです、無銭飲食なのだ。それを見ていた、探偵もどきのコンビが、男の支払いをし、話を聞くと、男は刑事で、むかし担当した殺人事件で、犯人は死刑が執行されていたのだが、今になって真犯人が名乗り出て来たとのことだ。その真犯人も、告白後亡くなってしまった。男は悩んだ末に、上司に相談するのであるが、もう済んだ話しであり、警察と裁判所の威信にかかわると、掛け合ってくれない。そこで、警察の威信を汚すべく、無銭飲食をしようとしたとのことだ。刑事の男は、死刑になった男には、妻と娘がいたことを思い出し、詫びたいとの事なので、ワトソン役が、会いに行くことになった。妻は、既に亡くなっていて、娘は結婚していて、夫は父親のことは知らないので、そっとしておいてくれとの回答だった。そのことを、刑事の男に話すと、刑事の男は、ホットするのであるが、今度は、娘が、玄関のドアに〈殺人犯の娘は出ていけ!〉の張り紙があったと、怒鳴りこんできたのだ。いったいどういうことなのか? どこから話が漏れたのか? この謎に、探偵もどきのコンビが挑むのだ。この探偵もどきのコンビは、なかなかできるし、おもしろかったのであるが、シリーズまでには、ならなかったですね。残念!

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