充ち足りた悪漢たち(文藝春秋)

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◆愛しのわが子
「充ち足りた悪漢たち」の文庫本の表紙に、こわーい!子供たちが描かれている。そう、そんな悪ガキどもの話が、六話も詰まっているのだ。第一話は、娘が知らない令夫人に付いて行ってしまう話だ。専業主婦の女性が、八歳の娘と一緒に電車で出かけた。ついうとうとしてしまって、気が付くと娘がいない。電車で座れると気持ちよくて、うとうとしますよね。気持ちわかります。慌てて娘を探すと、隣の車両の座席にちょんと腰かけているのだ。「黙ってこんな所まで来て--だめじゃないの!」と腕をつかむと、「うちの子をどうしようって言うの?」と、隣に座っていた令夫人が言うのである。少しおかしいだわと思いながらも、しつこいので、娘に「どっちがお母さん」と聞くと、なんと娘は、令夫人に寄り添ってしまった。そして、娘は、令夫人と一緒に行ってしまうのだ。昨日、夫と口論になり、イライラしていたので、朝、娘に他愛のないことなのに、しつこく叱ってしまったので、その仕返しと考えた。とりあえず夫に連絡し、一緒に娘を捜索し、娘を取り戻すことができたのであるが、その後、グジャグジャな展開になるのである。大人の行動にも問題がありますが、結局、八歳の娘が、自分が幸せになるにはどうしたら良いかの計算に乗っ取り、両親含めて、大人たちが踊られされている話しでした。こわー!

◆わが子はアイス・キャンデー
第二話は、アイス・キャンデーを始めた、小学五年生の男の子の話しだ。アイス・キャンデーって言っても、冷たいやつでは無いです。アイス・キャンデー → 氷菓子 → 高利貸、そう、高利貸を始めたのだ。元手は、三年間のお年玉と毎月のお小遣いを節約して貯めたお金だ。これをお金に困っている友達に利子付きで貸す。しっかりしたお子様なのだ。それを知った母親が父親に相談するのであるが、「一種の社会科の勉強にもなる、好きにさせておけよ」と取り合わないのだ。最初は、子供同士のおままごと程度で考えていたのであるが、お金に困っているのは子供たちばかりではないですよね。大人がやる浮気やギャンブルには、お金がかかるのだ。このアイス・キャンデーを知った大人たちもお世話になることになる。アイス・キャンデー屋のクラスの担任教師、父親、母親までが、お世話になるのだ。小学五年生の男の子に大人がお金を借りるとは?うむ待てよ、私も子供にお金を借りた記憶が・・・・。このアイス・キャンデーがきっかけで、ある事件が発生し、このアイス・キャンデーが校長にばれてしまい、アイス・キャンデー屋とその両親、クラスの担任が呼ばれて、校長と話をすることになるのだ。両親、クラスの担任は、自分もお金を借りたことがばれるのではないかとひやひやもんだ。さて、どうなることやら?

◆蛇が来た、どこに来た
第三話は、子供のいたずら電話の話だ。十歳ぐらいの団地に住む男の子が、小学校の生徒の家に「お子さんが学校で怪我をしたので、直ぐに学校へ来てください」とのいたずら電話をかけるのだ。しかも一軒だけでなく、何軒もかけるのだ。そして、慌てて団地を飛び出していく母親たちを見て笑っているのだ。恐ろしい。そして、その内の一人の母親が、自転車で慌てて学校へ向かう途中に交通事故に合い亡くなってしまう。その男の子は、それを見ても表情を変えずに、平然としているのだ。そして今度は、小学校に「爆弾を仕掛けた」とのいたずら電話を行い、生徒や教師の混乱を、小学校が見下ろせる高台で見て、満足げな微笑みを浮かべるのである。しかし、この爆弾仕掛のいたずら電話をかけているのを、女の子に聞かれてしまったのだ。そして、女の子とその母親が、男の子の家に行って、いたずら電話をかけていたことを、男の子の母親に知らせたのだ。男の子の母親が、男の子にいたずら電話をしたのか訊いてみると、男の子は「うん」とあっさり認めるのである。悪いことをしたとの意識がないのだ。さらに男の子は、いたずら電話で亡くなった母親の娘とよく遊んでいるという。男の子の考えていることは、全く分からない。そして、蛇が来たに続いていくのだ。

◆禁じられた遊び
第四話は、子供の覗きの話しだ。小学六年生の男の子の趣味は写真だ。父親の中古のカメラを使い始めたのが二年生の時で、三年生で一眼レフ、四年生で自ら現像・焼付けをやるようになった。そして、二年分のお年玉や小遣いを貯めて、五百ミリの望遠レンズを買ったのだ。そして、学校から帰ると毎日カメラバックを肩に、出かけるのである。行くのは、団地の少し高台の公園の時計台だ。ここからは、各団地の部屋が見渡せるのである。早速、カメラに望遠レンズを付けて、各部屋を覗いていく。まあ、気持ちは分かりますが、困った趣味ですね。そして、友達の部屋を覗いていると、友達の母親の浮気と思われる現場に出くわし写真を撮ってしまったのだ。もちろん遊び気分だが、撮った写真を友達の家のポストに放り込むのだ。放り込まれた方は、たまったものではない。不倫の二人は、対策を考えるのであるが、ここで男のだらしなさが出てしまい、愛想をつかれる。そして悲惨な事件に発展してしまうのだ。やっぱり、子供って悪さ加減が分からないのですね。自分は、ただのいたずらのつもりでも、大人にとっては大事件になってしまうことってあるんですよね。

◆「拝啓、通り魔さま」
第五話は、ガキのいたずら的な話ではありません。中学二年生の少女がピアノの稽古の帰りに、通り魔に襲われ暴行されてしまう。少女の両親は、警察に届けるか迷うのであるが、世間の目が怖くて届けるのをためらってしまう。そんなところに、ピアノの教則本が入ったビニール袋が落ちていたと、食料品店の主人が持ってきたのだ。そう、襲われた時に無くしたのを忘れていたのだ。その後、少女が暴行されたことが、みんなに知れ渡ってしまって、どうやら食料品店の主人が、話を広めたらしいと聞かされる。どうも、主人は黙っていたのであるが、主人の奥さんが、話を広めてしまったらしいのだ。その後、今度は、近所の多くの家で女性の下着泥棒が発生し、食料品店で盗まれた下着が見つかった。主人が下着を盗んだとみんなに広まり、主人は店をたたんで出ていくことになるのだ。そう、少女の仕返しなのだ。気持ちは分かりますが、犯罪はだめですよね。そして、食料品店の主人にとどめを刺すのである。丁度TVで仕返しのドラマをやっている。これも、女の子が暴行され仕返しをする話だ。女の子の心に傷をつけると恐ろしいことになるんですね。

◆塾に行く道
第六話は、良い話でした。英語の塾、数学教室、スイミングクラブ、ピアノ・・・・に通っている小学校六年生の男の子の話しだ。男の子は、正に分刻みで毎日行動しているのだ。近所の奥様達と塾の話になり、男の子の母親が、うちの息子はXX英語塾に通っていると言うと、あそこの塾は、なくなったと聞かされる。おかしい、いつも英語の塾には行っているし、月謝も持って行っている。母親は、男の子本人に聞けばよい話なのに、聞くことができず、塾があるのかを見に行くと、確かになくなっているのだ。男の子は、いったい英語塾へ行くと言って、どこに行っているのか? さらに、持たせた月謝は、どうなっているのか? 気が気ではない。男の子本人に問い詰めればよいものを、できないのである。仕方なく、男の子の友達に、探りを入れるように頼んだのであるが、裏目に出る。頼んだ友達は、結構悪で、男の子がゆすられてしまうのだ。そこに登場するのが、お金持ちのクラス委員の女の子だ。女の子の機転で、悪の友達のたくらみに気が付き、見事解決してしまうのだ。しかし、英語塾へ行ったふりして、何をしていたのでしょうかね??

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