子供部屋のシャツ(文藝春秋)

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本作は、久々に怖い話でした。別荘風に、ちょっと小高い丘、林の中に建つ洋館。---真新しくて、それでいて、シックである。この洋館の二階の空っぽの部屋。真中に置かれた椅子の上に、立てかけられたモノクロの写真と、一枚の汚れたシャツ。写真は、恨みのこもった眼差しの男の子、汚れたシャツのシミは、血の汚れだ。男の子は、十歳にしては小柄な子だった。小柄というだけでなく、いつも暗がりに引っ込んで出て来たがらないという性格で、いっそう小さかったという印象を残していた。「さあ、やってみて!」「いやだ」「やればできるのよ!誰にだってできるんだから!」「僕、いやだよ」先生と男の子のやり取りだ。男の子は、高い所を、極度に嫌った。それも二階とか三階とかでなく、ただジャングルジムに上がるのすら、怖がって、やろうとしなかった。こわごわ人生に踏み出し、慣れることのできない子には、足下がしっかりしていないものは、それだけで恐ろしいのだ。先生は、子供のころから、どんな高い木にでも平気で上がる子だったから、それが分からないのだ。・・・私と一緒、私も自分でできることは、相手もできるはずだと、攻めてしまうのだ。どれだけ、みんなを、貶めて来たか?反省!「やってみないから怖いのよ!さあ、頑張って!」クラスの子みんなが見ている前。先生は、男の子のプライドで、多少おっかなくてもやってのけるだろう、という期待があったのだ。だが、ついに男の子は、できなかった。ジャングルジムの一番上に立つ、という、ただそれだけのことが。「次の時間までに、上がれるようにしなさい。いいわね」「できなかったら、その班全員、体育は2をつけるわよ。分かった?」出たーーー、全体責任!昭和だね!!その日の放課後。ガタガタ震えながら、男の子がジャングルジムの一番上まで上がった。しかし、そこで立ち上がることができない。「やれよ!」「早くやんなさいよ!いくじなし!」「落ちたら、ただじゃおかないからな!」男の子のグループの子の声が飛ぶ。とても励ましている言葉ではない。・・・・男の子は、立ち上がった、ジャングルジムの上に両足で。でも、汗をかいていて、足が滑ったと思うと、悲鳴を上げて、男の子は、落ちた。打ちどころが悪かった。男の子は、亡くなった。・・・・静かにドアが開いた。廊下の明かりが、椅子の上の一枚のシャツと、男の子の写真を照らし出した。「たっぷり時間はあるは。お金もね。このときのために、私は八年間必死で働いて来たんだから」男の子の母親だ。男の子の先生とグループの子たちへの復讐が、始まるのだ。

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