復讐はワイングラスに浮かぶ(新潮社)

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◆静かなる会議
第一話は、産業スパイの話だ。今は極秘情報は、コンピュータで管理されセキュリティーで守われていて、そのセキュリティーを破って情報取得するのが産業スパイですが、昭和ですね!ここで登場する極秘情報は、〈極秘〉と赤いスタンプが押された書類と図面、そしてマイクロフィルムなのだ。すごい!!この極秘情報が入った大判の封筒を何者かに渡されたサラリーマンの男、会社に遅刻しそうで慌てていたので、封筒を渡されたのに気が付いたが、そのまま封筒を持って会社に出社したのだ。〈極秘〉と赤いスタンプが押された書類はドイツ語で書かれていたため、ドイツ語が分かる同僚のOLに翻訳を依頼した。OLは翻訳しようとしたが、OLの持っている辞書に載っていない専門用語ばかりで、無理だった。ただし、「戦略」がどうとか、「戦争」がどうとかと、軍事上の秘密かもしれないということは分かった。おいおい、大丈夫?そんな極秘情報もっていて、やばいんじゃないの? そういえば、極秘情報の封筒を渡された時に乗っていた電車で人が毒殺されたらしいのだ。しかし、好奇心には逆られない。OLの友達に、工学部に行った人がいて、ドイツ語も分かるので、書類の翻訳を依頼したのだ。友達に依頼してから三日たったが、音沙汰がない。電話しても誰も出ないのだ。サラリーマンの男とOLが友達の家を訪ねると、なんと友達は、引っ越してしまっていたのだ。一体どういうことなのか? そして、OLが車で引き殺されそうになり、けがをした。産業スパイ事件の闇に引き込まれていくのだ。サラリーマン、どうする?

【昭和】計算尺

◆復讐はワイングラスに浮かぶ
第二話は、人事課長の話だ。人事課長というのは、大企業ならかなり力のあるポストであるが、総社員六十人くらいの中企業では、そう仕事もあるわけではなく、課長の下に二人の女性がついているくらいの規模なのだ。その人事課長が「参ったなあ」と頭を抱えている。入社した若い新しい女子社員がすぐに辞めてしまい、社長から「お前の人事管理がしっかりしていないからだ」だと叱られている。今日も経理に入って一か月の新人の女の子から辞表が出されたのだ。そのことを人事課長の同期の女性に相談すると、「要は男よ」「独身男性にろくなのがいないから、どんどん辞めて行くってわけね」と言われた。そして「私の甥っ子にね、いい男がいるのよ。二枚目でさ。でも上っついていないの。とても仕事もできるし」と紹介された。どうも彼の会社が潰れて、浪々の身らしい。早々社長に相談し、彼を入社させたのだ。そして、短大での女の子が入社した。早速新入女子社員は、彼の虜になり、なんと八ケ月も辞めずに勤務したのだ。新記録? でも問題があった。なんと彼は、妻子持ちだったのだ。彼も新入社員を騙しているのと、妻子に申し訳ないとの思いで、おばさんに止めたいと相談するのであるが「仕事、仕事。そのために特に手当て、払っているんじゃないの」聞いてくれない。そして、遂に新入女子社員に、彼が妻子持ちであることが、バレてしまい、新入女子社員の彼への復讐が始まるのだ。しかし、彼もかわいそうだね。会社の指示に従っていただけなのに、こんな目に合うなんて・・・。

◆別れ話にはコーヒーが似合う
別れ話ね、どうなんだろう? 別れ話されたら、やっぱ根に持っちゃうかな? そんな話だ。二十四歳のOL、何人もの男と付き合っては、別れているらしい。今回も二十三歳のフレッシュマンの彼氏に別れ話をするのだ。OLは、経験豊かなので、別れ話に気をつかう。①別れ話は、コーヒーショップに限る。酒があると、やけ酒になり、酔ってからまれたり、泣かれたりして面倒だからだ。②別れ話は、約束の時間よりずっと早目に行く。向こうを待った、という気持ちがあると、少しは良心のうずきが違って来るからだ。③別れ話の席は、周囲を席で囲まれた場所を選ぶ。周りで人が聞いている、と思えば、喧嘩にならないからだ。④別れ話は、注文したものが運ばれるタイミングを計って言う。いきなりのショックで感情的になりかけたところへ、第三者が顔を出させ、ハッと冷静になるからだ。⑤別れ話は「あなたのせいじゃないの。私が悪いのよ」と言う。でもこれで納得した人は一人もいない。今回もそうだ。しつこく別れる理由を聞かれたため、「私ね、好きな人がいるの」と嘘をつく羽目になる。「どんな人ですか」と聞かれ、「ええと・・・年は三十五で、一流会社の課長さんで・・・その・・・背の高い、スポーツマンタイプの・・・」と、出まかせを言うのだ。彼氏もしつこい「その人に合わせて下さい、それで一切あなたのことは諦めます」と食い下がる。そこへ「やあ、遅くなってすまない」と、長身で、スポーツマンタイプの、三十五歳ぐらいの男性が現れたのだ。そして「彼女がいつも世話になって」と言うのだ。彼氏は、足早に店を出て行ったのだ。別の席にいた男性が、話を聞いていて、助け舟を出したのだ。そして、OLとこの男性とどうなるかは、お約束通りですよね。でも、殺人事件に発展してしまうのだ。

◆ある晴れた日に
天気予報ね、今の時代天気予報は素晴らしい。大体当たるし、地図上で雨の降る場所が示され、また地図上で雨の予報もしてくれるのだ。私は、良く散歩するのであるが、天気が良くないときは、この地図の雨予想を見て、散歩する時間を決めています。そして、昭和の時代の天気予報は、良く外れましたね。天気予報官の経験と感を頼りにしていたので仕方ないですか。そんな昭和のお天気屋さんの話だ。有料で局地的な天候の予測をする商売をしていたのであるが、外資系のコンピューターと通信網を屈指して天気予報を行う企業が日本に乗り込んできたため、お客を奪われ、倒産させられたのだ。その会社の社長をしていた男のアパートに女の子がやってきて、「明日晴れにしてくれ」と頼まれたのだ。「明日は本当は雨なんだ。それを晴れにするのは、凄くお金がかかるんだよと」言い聞かせたのだ。女の子はコックリと頷くと、「また来るからね」と手を振って走って行ってしまったのだ。そして、会社後始末で事務所に行くと、三十くらいの女性が訪ねてきて、「明日、午後三時に、確実に晴れている場所を教えてくれ」と頼まれたのだ。会社が潰れて何もできないと、追い返した。そして、アパートに帰ると、新聞受けに百万円と手紙が入っていた。手紙は、子供みたいな字で、『このおかねで、あしたはれにしてください』とある。昼間訪ねてきた女の子が、元社長の男の話を信じて、依頼に来たのだ。元社長の男は、外資系の天気予報会社に引き抜かれた元部下と、外資系の天気予報会社のデーターを屈指して、明日、午後三時に、確実に晴れている場所を探すのであるが、いかがでしょうか? 今ならできるかな??

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