静かなる良人(中央公論新社)

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「静かなる良人」は、その題名通りの夫の夫婦の話である。奥さんは、三十三歳なのだが、奥さんを見て三十過ぎとは思う人はいないらしい。結婚して七年目であるが、子供がいないから若く見えるなのかもしれない。夫は、三十六歳であるが、無口で、もっさりしていて、何を考えているのか良く分からない人だが、決して偏屈ではない。何があっても怒りもせず、といって冗談の一つも口にしないで、新聞を隅から隅まで読むのを趣味にしているような人だ。ある日奥さんが家に帰ると、その夫が何者かに刺されていたのだ。そして、息を引き取る間際に「ゆきこ・・・・・」と言って亡くなった。ここからこの殺人事件の捜査が始まるのであるが、奥さんが知らなかった夫の顔がいくつも見つかるのだ。一つ目は、過激派の顔だ。夫は、大学の時に社会研究会を立ち上げ、卒業後もこの研究会の顧問をしていて、月一度の定例会の会合に出ていたのだ。そんなこと奥さんは全く知らなかった。二つ目は、サンタクロースの顔だ。月に一度、孤児たちの施設を訪れ、文房具とかボールとか縄跳びの縄とかをプレゼントしていたのだ。そんなこと奥さんは全く知らなかった。三つ目は、スト破りの顔だ。夫が勤めていた会社で問題が起こり、労働組合がストライキに突入したのであるが、夫は、労働組合を裏切って、スト破りをやり、会社側についたのだ。この三つの顔は、奥さんとしては全く考えられない顔で、驚くのである。そしてさらに調べていくと、夫の善良さが分かってきて、奥さんは、死んだ夫に改めて恋をするのである。いやー、私も結婚して四十一年になるが、妻のことが分かっているのか心配になってきた。妻にもいろんな顔があるのかもしれない? それより、殺人事件と「ゆきこ・・・・・」は、どうなったのだ??

【昭和】過激派

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