さびしい独裁者(徳間書店)

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駆け出しのタレントの女性が、夜道を歩いていて、一人の男とすれ違った。何だろう?いやに古風のスタイルで、ステッキなんか突いている。まだ若い男らしく、足取りも軽い。すれ違うときに、にこやかに微笑して、会釈していった。すると今度は、「すみません」と、声をかけられた。中年の、穏やかな笑顔の紳士だ。・・・「娘があなたのファンでして。---サインしていただけるかな?」タレントがサインをすると、「ありがとう」と、紳士が礼を言った。「娘も喜ぶでしょう」「そうですか」「あなたの生涯最後のサインと分かればね」「---え?」戸惑ったタレントの目の前に、スッと拳銃の冷たい銃口が現れた。「あの---」「お気の毒だが」引金が引かれるより、何分の一秒か早く、ヒュッと風を切る音がしたと思うと、アッと叫んで、その紳士が拳銃を落とした。手から血が流れ出している。「いけませんな。無抵抗の若い女性を殺すとは」びっくりして振り向くと、さっきの、ステッキを突いた妙な男が立っている。・・・・「物騒な世の中だ。---おけがは?」「いえ・・・・」そういってから、やっと、タレントは自分が殺されそうになったのだということが、分かって来た。「あの・・・・・ありがとうございました」と言いながら、どっと汗がふき出して来る。「いやいや。礼には及びません。若い女性の危機を救うのは、私の使命ですからな」と、いやに気取った調子で言うと、「しかし、こんな銃を使うところを見ると、相手はプロだ。---あなたはどこかの姫君かな?」「姫君?まさか!私---タレントです。TVなんかに出てるの」・・・・「なるほど。すると、なぜ命を狙われるか、覚えがない?」「それは---」と、タレントがためらったのを見て。「ないこともないが、他人に話すことでもない、と。・・・・」「すみません・・・・。ちょっとわけがあって」「ま、充分に用心されるように。---では、私はこれで」と、若い男は会釈をして、行きかけたが、ふと足を止めて、「もし、誰かに相談したいという気持ちになったときは、鈴木芳子という女性を訪ねておいでなさい」・・・、この若い男、誰だか分かりますよね?その後、なんだかんだあって、結局、タレントが、芳子を訪ねて来た。話を訊くと、タレントの女性と、プロジューサー、プロジューサー助手、カメラマン、カメラマン助手の五人が、中米の小さな国に取材に行った。この国は、軍事政権で、反政府ゲリラと、一年以上も内戦が続いている、やばい国だ。そして、ジープに揺られて三時間、山の中腹に、はりつくようにして何十軒かの家が建っている、小さな山村に来て、大事件を目撃してしまったのことだ。・・・華麗なる探偵たちは、こんな軍事政権に、立ち向かうことができるのでしょうか?
『シリーズ登場人物』

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