怪奇博物館(角川書店)

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◆狼男 町を行く
「怪奇博物館」は、ホラーミステリーの短編が、七編収録されている。第一編は、題名通り、狼男の話だ。三十五歳の独身女性の助教授が主人公だ。助教授は、八歳下の公私ともに助手の男から、友だちが、狼男を見たと聞かされる。友だちは、コンピューターの技術者で、超自然なんて、まるで信じてなく、世の中のことは、総べて0と1で表現できると思っているような男なのに、狼男を見たというのだ。0と1ね、なつかしい!何を隠そう私も、昔コンピューターの技術者だったんですね。アセンブリ言語で、プログラムを書いていました。今もアセンブリ言語って使っているのかな?その友だちが、会社の帰りに、駅から自宅がある団地に帰るため、夜の公園を歩いていた。公園の中は、寂しい所であるが、近道なので、通っているのだ。友だちが、もう少し行くと、道が大きくうねって、木立の暗がりの中へと入るところに来て、「キャーッ!」という悲鳴を聞いた。この先の木立の暗がりは、公園の中でも一番危ない場所らしい。「助けて!---誰か!」と、また声が聞こえたが、友だちは、突っ立ったまま、動かなかった。友だちは、子供のころから、頭は良かったのだが、腕っぷしは滅法弱かったのだ。放っとくんだ。可哀そうだけど・・・。しかし、友だちは、駆け出していた、暗がりの中へと。そこで、狼男を見たのだ。少なくとも、手足は人間らしかった。しかし、友だちの目をぐっと見据えたのは、とても人間のものとは思えない、燃えるように赤い目だった。そして、それは、カーッと口を開いた。鋭く光った牙が見えたのだ。やばい、友だち終わったと思いきや、その狼男が姿を消したのだ。助かった友だち。その後今度は、団地に住む四十歳のエリート社員の喉を嚙み切られる事件が発生した。こんなおいしい話を助教授が放っておくわけがない。助教授は、早速事件があった団地を訪れるのだ。先ずは、殺されたエリート社員の奥さんを訪ねた。助教授が、奥さんに何を訊くのかと思えば、「私、ご主人と愛し合っていたんです」と来た。すると、今度は奥さんが、「いくらほしいんですか」と来た。たまげた。訊くと、同じことを言って来たのは、助教授が、四人目で、前の三人はみな、お金が目当てで来たらしい。「俺はエリートだ、エリートはストレスがたまる。だから、どこかで発散しなきゃいけないんだって言ってたわ」だって。エリートは大変なんですね。それはさておき、奥が深そうですね、この狼男、さてどうなるのでしょうか?

◆吸血鬼の静かな眠り
第二話は、吸血鬼だ。パパとママ、そして中一の長女と小四の弟の四人家族が、夏休みに借りた別荘に来た。別荘は、外国人が買って、荷物が送られてきたが、待てと暮らせど、買った当人がやってこない。不動産屋は、向こうが何か言って来るのを待っている内に、三年がたってしまったのだ。ただせさえ古い家が、ますますいたみがひどくなるので、手入れして、貸すことにしたらしいのだ。「僕が見付けたんだ」と、弟が、長女に、得意げに言って、鼻を動かした。別荘の地下室だ。地下室は、埃っぽい匂いがして、クモの巣があちこちにレースのカーテンのように絡まっている。そして、何だかわからない木箱がやたらに積み上がっていた。その積み上がった木箱の陰に、まるで身をひそめるようにして、お棺が置かれていたのだ。お棺は、ともかく大きく、長さも、幅も高さも、普通のお棺より、一回りも二回りも大きかった。それに、色も黒ずんでいて、光沢があり、しかもただの四角い箱でなくて、まるで家具のように、曲線のへりや装飾らしい模様があるのだ。地下室には、電灯一つ無いのだが、天井近くに、明かり採りの窓がある。「これ、内緒だよ、僕がパパに言うからね」「ああ。---いいわよ、好きにしなさい」夕方だった。陽がかげり初めて、地下室もスッと沈み込むように薄暗くなった。「もう行こう。暗くなって来たわ」弟について、長女は木箱のわきを回り、階段の方へ歩いて行った。〈---動かしてくれ〉「え?」長女は、足を止めた。「---何か言った?」階段を上がりかけていた弟が、足を止めて振り返った。「何も言わないよ、僕」「そう」でも---何だか、いやにはっきりと聞こえたようだった。確かに、弟の声じゃなかったみたいけど・・・・。弟が先に階段を上がって行く。長女は足元を見ながら上がり始めた。〈---私を動かしてくれ〉長女はギクリとして、振り向いた。そこには誰もいない。でも、確かに、その声は耳もとで聞こえたようだった。誰?誰がしゃべったの?・・・・おいおいやばいんじゃないのこの別荘。とっとと逃げないと・・・・。「どうして言わなかったの?」夕食を終えて、ベットの中だ。「あのお棺のこと、どうして黙ってたの?」「何だか・・・惜しくって」・・・・・。お棺のことを、パパとママに話さなかったのだ。やばーーーい、早く逃げないと・・・。どうなってしまうのでしょうか?? そういえば私は、今別荘にいます。私の別荘に地下室あったかな?確認しなくちゃ?

◆呪いは本日のみ有効
「ハッピー・バースデー、トゥーユー・・・・」から話が始まった。お金持ちのお嬢様の二十歳の誕生日だ。お嬢様の住む屋敷で、誕生パーティーが開かれた。延べ百人近い友だちが、やってきたらしい。その友だちに、軽い食事や飲み物を用意したのは、この屋敷のお手伝いさんだ。今は、パーティーが終わって、お手伝いさんが、パーティーの片付けをしている。「---お嬢様」「なあに?」「プレゼントの方はいかがなさいます?」「プレゼントね!---そんなものがあったんだっけ!」「山のようになっていますけど」お嬢様が、客間にいってみると、プレゼントが山積みになっている。そして、お嬢様は、一番上に、チョコンとのせてある、小さな包みに目を止めたのだ。それは、ごく当たり前の包装紙でくるんだだけで、リボンもかかっていないのだ。誰からだろう?お嬢様は、その包みを開いた。「---なあに、これ?」と、呆気に取られる。出て来たのは、大きなカナヅチとワラ人形、それに五寸釘たったのだ。いやーー、ワラ人形と五寸釘ね、かなり歴史がある呪いらしい。どこかのオモチャのメーカーが、冗談に、そのセットを売り出したら、結構よく売れたらしい、と書いてあったんで、Amazonで検索したら、出て来る、出て来る、へえーー本当に売っているんだ。びっくりした!これ買って、どうするのですかね?って、やることは一つしかないか?お嬢様は、「面白いじゃないの。気がきいているわ」「さて、誰を呪い殺そうかな」と、カナヅチや人形を持って、部屋を出て行ったのだ。そして、お手伝いさんが、第一話の「狼男 町を行く」に出て来た、助教授と公私ともに助手を訪ねて来た。お手伝いさんは、助手の知り合いで、相談に来たのだ。話を訊くと、お嬢様は、好きなボーイフレンドがいるが、そのボーイフレンドには恋人がいて、その恋人が、お嬢様の古い親友なんで、親友に気をつかって、お嬢様は、ボーイフレンドと必要以上になれなれしくしないとのことだ。ところが、親友が遊びに来た時、お嬢様は、親友のネックレスを、自分の持っているネックレスと、無理やりに交換したとのことだ。そう、ワラ人形の呪いには、呪う相手の持ち物が、必要だからだ。そして、親友が、倒れて入院したとのことだ。なるごど? この呪いに、助教授と公私助手のコンビが、挑むのである。さて、どうなることやら。

◆受取人、不在につき--
「ともかく、だめなものはだめなんだ!」から話が始まった。「でも、僕だって困っちゃうんですよ」「お前さんが困ろうと、そいつはこっちの知ったこっちゃない!」・・・・・。マンションの管理人と運送会社の運ちゃんとのやり取りだ。二日も配達に来ているのに、何時も留守な部屋があって、管理人にお届け物を預かるように頼んでいるのに、頑固おやじの管理人が受けてくれないのだ。「おじさん、どうしたの?」と、スーパーでの買い物帰りの奥さんが、見兼ねて声をかけた。「やあ、あんたか。---いや、こいつが何が何でも荷物を置き逃げしようとするから、文句を言っとったんだ」置き逃げね?うまいこと言うね、この管理人!奥さんが、お届け先の部屋を訊くと、最近引っ越して来た、奥さんの部屋の下の部屋とのことだ。「うちは、ちょうどお届け先の部屋の上だからね、子供もいるし、一度は挨拶しておかなきゃ。話のきっかけに、ちょうどいいわ」と、奥さんが、お届け物の荷物を預かることにしたのだ。「じゃ、すぐ持って来ますから!」と、運ちゃんが、トラックから、箱をかつぎ込んで来たのだが、それが・・・・。「ただいま!」と、中学二年生の娘が、いつもの通り、玄関へ、勢いよく飛び込んで来た。「わっ!」と、声を上げた、目の前に、壁のような馬鹿でかい箱が、デン、と置いてあったのだ。夕食後、奥さんと娘が、下の部屋に行ったが、留守だった。そして、この箱を預かってから、奥さんと娘たちの周りで、奇妙な出来事が、起き始めるのだ。先ずは、娘の小学生の時から親友だった子が、行方不明になった。親友の母親が、朝起きてみたら、娘がベットにいなくて・・・。別に、書置きもないし、ボストンバック一つ、なくなっていないとのことだ。後は、マンションの部屋から、机がなくなったり、マンションの屋上に干していた、布団がなくなったり、更には、椅子や洗面器まで、なくなるのだ。そんな金目のものとも思わないものまで、なくなるのだ。そして今度は、箱を預かったうちの娘の自転車が、なくなり、更には遂に、箱を預かったうちの奥さんが、行方不明になってしまう。この難事件に、箱を預かったうちの娘が、体当たりするのだ。ところで、あの馬鹿でかい箱は、何だったのでしょうか?

◆帰って来た娘
またも、助教授と公私助手の登場だ。女子中学生が、交通事故で亡くなった。校門を出て、横断歩道を、ちゃんと信号を守って渡っていたのに、信号無視で突っ走って来た赤いスポーツカーにはねられたのだ。それから三か月、亡くなった女子中学生の母親は、トントントン・・・という団地の階段の足音に、あの子かしら?娘が帰って来たのかと、耳を澄ますのだ。そんなはずがないのは、わかっているのであるが・・・・。娘の部屋は今でも元のままになっていた。机も椅子も、そして、服も。机の上で広げられたままだったノートも、そのページをきちんと見せて、帰ることのない主を待っていた。---トントントン。また誰かの足音が聞こえて来た。トントントン・・・。どんどん上がって来る。誰だろう?それはまるで娘の足音のように、軽やかで、弾むようだったのだ。玄関のドアが開いた。母親は居間のソファから体を起こした。「ただいま!」若い女の子の声だった。母親はポカンとして、立っていた。「寒いなあ!お腹空いた!---お母さん、何か食べるものない?」その娘は、マフラーと鞄をソファーに投げ出すと、台所へさっさと入って行った。「あ、カップラーメン!ねえ、これ食べちゃっても構わないの?」と、大きな声が聞こえて来る。母親が台所へ行くと、その娘は、早々とヤカンをガステーブルにかけている。そして、食器棚から、娘が使っていたミルクカップを迷いもせず取り出したのである。---その娘は、娘と全然似ていなかった。しかし、実に自然に、娘のように振舞っていた。母親は、これが本当の娘で、自分の記憶の方が間違っているのか?そんな気になったのだ。「参ったよ」と、亡くなった娘の父親は首を振り、ため息をついた。「面白い話ね」と助教授。助教授と知り合いだった父親が、助教授に相談に来たのだ。「出張から帰ってみると、見たこともない娘がいて、『お父さんお帰り』と言うんだ。びっくりしたどころじゃない」「家内も、今はすっかり、その娘を本当の娘と思い込み、何とも幸せそうなんだ」「咎めるようなことを言うと、泣いて怒るんだ。せっかくあの子が帰ってきたのに、とね」「女房は、娘の魂が、その娘に乗り移ったと思っている」「そんな馬鹿なこと、あるわけがない、といくら言っても聞かないんだ」「助けてくれ」と、父親。助教授は、この依頼を受けたのであるが、どうするのでしょうか?しかし、その娘の目的が、分かりませんね、何でそんなことを、しているのでしょうか?

◆避暑地の出来事
冒頭、「まるで、あれみたいじゃない。ほら---」から始まった。「あれ」と言えば、何でも通じると思っている、女子大生の言葉だ。うんーーー、最近私も「あれだよ、あれ、ほらあれだよ」が、多くなりました。哀しーですよね。それはさておき、女子大生が言った「あれ」は、「十三日の金曜日」のことだった。女子大生たち、女子三人と男子二人が、夏休みに、車で避暑地に向かっているところで、「十三日の金曜日」とシチュエーションが、似ているとのことだ。「十三日の金曜日」ね、なつかしい!私もこの年になるまで、何回も実際に十三日の金曜日があり、その都度「オー!今日は、十三日の金曜日」だ、と叫んでました。最近も、ディスカウントショップの「ジェーソン」に行く度に、「十三日の金曜日」を思い出してます。女子大生たちが向かうのは、湖のそばの古い別荘で、ろくに手入れのしていないということで、着いたら、先ずは大掃除だと覚悟していたが、着いてみると、予想していたよりずっときれいで、みんなホッとしたのだ。女子三人は、掃除と料理、男子二人は、壊れた場所の修理と手分けして、作業に取り掛かったのだ。女子三人が、一階で、料理の支度を始めると、男子の一人は、二階のドアのきしみの修理、もう一人の男子は、玄関の方に出て行った。料理の支度も終わり、女子の一人が、男子を呼びに、玄関の方に行くと、頭の上で足音がした。女子の一人が、見上げていると、背後の階段に、足音がして、男子の一人が下りて来た。「ご苦労様、もう夕食にするわ」下りて来た男子が、浴槽の方に、手洗いに行った。コツ、コツ。---また足音。外に行ったと思ったもう一人の男子も上にいるんだ。女子の一人は、玄関のドアの鍵をかけた。そして、コーヒーを淹れに、台所に行き、お湯を沸かしてかして、ドリップにペーパーフィルター敷いて・・・。---ふと、目が窓の方へ向いた。汚れたガラス窓越しに、この別荘の小さな庭と、その向うの木立が見分けられたのだ。そこに、誰かが立っていた。ほとんどシルエットでしかない、男の姿。すると、ドンドン、と玄関のドアを叩く音がした。「おーい!締め出さないでくれよ!」もう一人の男子は、外にいたのだ。そして夜中に、女子の一人が、ベットに起き上がった。あの二階の足音は、誰だったんだろう?そして、台所から見えた、あの男は・・・・。錯覚?・・・・さて、どうなるのでしょうか?この五人・・・・・?

◆恋人たちの森
「ねえ!やだよ、こんな所じゃ!」「うるせいな。言っただろ、金ねえんだからさ」・・・・夜の公園、寒い冬のさなかを除けば、ほぼ一年を通じて、アベックの名所での、十七歳の少年と十六歳の少女の会話だ。公園は、大変な混雑だった。ベンチなど、まだ明るい夕方の内から「満席」で、予約しておくというわけにのいかないから、二人のように、遅れて来たカップルは当然座る場所などないのである。「---もう諦めたら?」散々歩き回って、もう空いている所といえば、何もない芝生の上しかない、ということが分かった。そこにだって、寝転がって抱き合っているカップルがいたが、いくら何でも、二人もそれほどの度胸はないのだ。「じゃ、もう帰ろうよ」「だけどさ、もうちょっと歩いてみようぜ。な?」「もう一回りしちゃったじゃない。これ以上あるいたって---」足を止めた。---目の前に、誰かが立っていた。ちょうど、街灯の光が立木で遮られた場所で、相手はぼんやりとした影でしかない。「場夜を探しているのかね」「その先が空いているよ」と、その男が言った。「ええ?」「その右手に、いい場所があるよ。行ってみな」その男は、ゆっくりと歩いて行った。「その右だって言ったな」「行くの?」「ものはためしだ」「---へえ!こりゃいいや」高い茂みに囲まれて、ポカッと草地が空いているのだった。しかも、街灯の光が、ほどほどに射し込んで、真暗でもないが、といっ覗き屋に覗かれるほど明るくもない。「なあ、ここならいいだろう?ちゃんと下にジャンパー敷いてさ」「うん・・・・。でも・・・・」二人は「恋人同士」といったものの、まだ一度も寝たことがなかったのだ・・・・。話は変わって、例の助教授と公私助手の登場だ。いつものように、ホテルのベットの中だ。助教授が、レポートに目を通すため、先に一人でホテルを出た。タクシーを拾おうと歩いて行くと、救急車が来て、すぐわきの病院に入った。「しっかりしてよ!目を開けてよ!」と、一人の少女が泣きながら降りて来た。「あれ、もしかして・・・」と、助教授。急患入り口のドアのすぐ奥の長椅子に、少女は腰をかけて、祈るように固く両手を握りしめている。助教授が、その前に行って、足を止めた。「やっぱり」なんと、その少女は、助教授の姪だったのである。話を訊くと、姪は、彼氏と公園にいて、彼氏が、手を洗いに行ったが、戻ってこないので、探しに行ったら、木に首を吊っていたというのだ。姪は、彼氏が、首を吊るはずがないというのだ。この事件に、助教授と公私助手のコンビが、挑むのだ。このコンビ、結構面白い、今後も登場してくるのかな?

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