【広告】スポンサーリンク |
小学校六年生の坂部律子が、昼休みの教室で、親友の江田香織と話をしていると、パパから電話が来た。「今、家へ電話したけれど、ママがいないんだ。だから、お前に話しておく。よく聞いてくれ。パパはもう家に帰れないんだ。・・・・・」仕事の上での違法献金の責任を一人でしょい込んで、警察に追われ、逃亡するという。律子は、何だかひどくくたびれて、やっと家に辿りついた。パパがどこかへ行っちゃった、ということを、ママにどう話せばいいか、考え考え歩いて来たからだ。「全く、何で子供が親にこんなことを説明しなきゃいけないの?」逆じゃないか、とブツブツ文句を言いながら玄関のドアを開けようとした。鍵がかかっている。---まだ帰ってないのかな。「ただいま。---ママ?」と声をかけたが、中は静かなものだ。帰ってないか、と、少しホッとした。ランドセルを、自分のベットに放り出すと、律子は、パパの小部屋に入って行った。不意に、涙が溢れて来て、律子はあわてて手の甲で拭った。---しっかりして!パパが言ったじゃないの、お前は強い子だ、って!でも---一体どうなるんだろう?もちろん、会社のお給料はもらえなくなる。ママがどこかで働く・・・・といっても、ママは、それこそ娘より気が弱いくらい、内気で、大人しいのだ。「ママにできる仕事なんて、あるかしら?」律子は不安だった。そして、何気なくパパの机の方へ歩み寄った律子は、そこに置かれた封筒に目を止めた。〈パパへ〉とある。---ママの字だ。パパはいないんだし・・・・。でも、何だろう?ちょっと迷ってから、律子は封筒を手に取った。封を切って、中の手紙らしきものを出す。広げると、ちょっとくせのある、ママの字だ。〈パパへ。突然、こんな手紙を読ませてしまって、すみません。散々迷ったのですが。私、家を出ます。・・・・〉好きな男性がいて、駆け落ちしたのだ。ガーーン!同じ日に、パパとママが、同時にいなくなったのだ。こうして、小学校六年生の姉と三年生の弟の子子家庭の生活が、始まったのだ。弟が寝たのを確かめて、律子は、貯金通帳の類を全部引張り出して来て、調べてみた。その結果、衝撃的な事実が明らかになった。二人には莫大な財産が残されて---なんかいなかった。どの口座も、せいぜい残金は十万円程度しかなかったのである。「参ったなあ」かくて、律子は、あたかも赤字に悩む主婦の如き心境で、頭をかかえたのだった。しかしながら、律子も和哉も、自分たちを置いて出て行ったとはいえ、父親も母親も大好きだったから、立派に留守宅を守ると誓うのだ。えらい!立派!!でもどうなることやら?
『シリーズ登場人物』


コメント