幽霊たちのエピローグ(集英社)

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◆幽霊の前半分
女子高生だった大宅令子が成長して、女子大生になっていました。令子のボーイフレンドのカメラマンの新村誠二も歳をとって、二十七歳になってました。令子が、令子の親友から「ねえ令子」と、声をかけられた。「なに?」「A先生のこと、どうなったの?」「A先生?先生がどうしたの?」「いやねえ、令子ったら、とぼけちゃって」「とぼけるって、何よ?」「知っているんだからね、私」「へえ、じゃ教えて」「A先生と令子、この前の日曜日、ドライブに言ったでしょ」「ドライブってわけじゃないわ。博物館へ案内してもらったのよ」「博物館?」「そう、個人のコレクションを博物館にして展示している家があって、そこへ連れてってもらったの。中世の鎧やら剣やらとお見合いよ。色気も何もないわ」「なんだ」・・・・。でも本当は、博物館の帰りに、「---大宅君」車を突然道の端に停めて、A先生が言ったのだ。「僕は君を愛してる」「は?」「本気なんだ。年齢は、違っているが、僕はそんなこととは関係なく、君を愛している。---君の気持ちを、教えてくれないか」と、来たのだ。「先生を尊敬していますわ。大学でも一番業績を上げておられるし、でも、私が女として先生を好きになることは、ないと思います」と、そっけなく令子が返した。話はそれで終わったのだが。数日後、令子が、A先生の講義がある教室に行くと、A先生が、首を吊って死んでいたのだ。机の上に、一通の封筒、たぶん遺書だ。令子は、その封筒に手をのばして、ためらった。開けちゃいけない。そう、これは証拠品なのだから。でも・・・もし、この自殺の原因が令子にあったら?令子は、しばらくためらっていたが、中を見て、もし何の関係もなかったら、このまま置いておけばいい・・・。令子は、そっと封筒を手に取ったのだ。そう、事件に巻き込まれていくのだ。そういえば、令子の父親の警視庁捜査一課の大宅警部の再婚話もありました。どうなることやら?
『シリーズ登場人物』

◆幽霊たちのエピローグ
「幽霊なんて、いるわけないじゃねえか」女の子の前では、たいてい男はこう言うものである。「だって---」女の子は、ちょっと可愛らしく怯えて見せる。こちらも、本気で怖がっているのじゃなくて、ただ相手から「可愛い」と思わせたいと思っているのである。「ここ、幽霊が出るって、昔から評判なのよ」「出やしないよ、そんなもん」・・・・。十六、七といった女の子と、十八ぐらいの彼氏が、幽霊屋敷の前にいる。二階建てにしては背の高い洋館で、たぶん、屋根裏にも部屋らしきものがあるだろうと思える。尖った屋根、あちこちがはげ落ちた壁に這うつたが、まるで生きもののように見える。幽霊屋敷ね?昔から、大抵どこにもありましたよね。肝試しの不法侵入、未だに話題になってますよね。「誰かに見られたら困るわ」「じゃ・・・・入ろうか」女の子も肯いた。古ぼけたソファが、忘れられたように置かれている。もちろん明かりはないが、窓から月明りが差し込んで、中はわりあい明るかった。「ここで?」「何か、見すぼらしいわね」「そうか?でも、ロマンチックでいいんじゃねえか」・・・・。「シッ!」「足音・・・・」「足音?---聞こえなかったぜ」「聞こえたわよ」「---何も聞こえないじゃねえか、ほら」少年は体を起こして言ったが、そこへ、コツ、コツ、と・・・・。「二階だわ・・・・」「出ようよ。いやだわ。誰かいるなんて」「うん・・・」小部屋のドアを開けようとした。そのとき、新しい足音が、表から近づいて来たと思うと、玄関のドアがきしみながら開く音。今度は、キ、キ・・・・。金属のきしむ音が、二人の背後から聞こえて来た。二人は、ソファの後ろへと入り込んで、身をかがめた。「ここを取り壊すそうだ」「マンションが建つらしい」「ひどいじゃないの。そんな!」「私たちはどこへ行けばいいの?」「困った話だ。---といって、連中は幽霊のことまで考えてはくれん」・・・・「あいつが死ねばいい」「死ねば、当分はマンションどころではなくなる」「よし、私に任せてくれ」「頼むわよ。私たち幽霊の未来がかかっているのよ」・・・・・・。やばー、幽霊たちの殺人計画を、二人は、聞いてしまったのだ。そして、この女の子の家庭教師を、大宅令子がしていたのだ。女の子から相談を受けた令子が、カメラマンのボーイフレンドと共に、この事件に挑むのである。いやー、もうひとつの幽霊シリーズ、面白い!でもなんだか。「幽霊から愛をこめて」と、この「幽霊たちのエピローグ」の二作しか、書かれていないみたいです。続編を見たいもんですね!

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