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「踊る男」は、シュートショート集で、何と、三十四編もの作品が、収録されています。一編が、四ページ程度ですが、みんな読みごたえがあります。前半の十二編は、男がバーに行く話で、男がバーに入って行くと、何時も先に飲んでる男がいて、入って来た男の様子を見て、どうしたのと話しかけてくるのだ。いやいやこんな目にあったとか、入ってきた男が、状況を説明すると、先に飲んでいた男は、僕の知り合いに、こんな奴がいてと、話し出す。その話は、入ってきた男が経験したことと、先に飲んでいた男の知り合いが、似たような経験したのであるが、みんな悲惨な結果になっていて、入ってきた男の経験が、そんなんですんで良かったじゃないのと、励ますのだ。先に飲んでいた男は、いろんな知り合いがいるらしく、何をやっている人なのか、気になりますよね。そもそも、何で何時も、バーで飲んでいるのでしょうか? 後半のシュートショートで、一つ紹介、間違い電話の話です。男が、ガランとした部屋の、えらく座り心地の悪い椅子に腰を下ろしている。そして、ものの三メートルと離れていない所に。拳銃の銃口が、男を狙っているのだ。拳銃を構えているのは、若いチンピラの勝治という奴で、みんなからはただ「勝」と呼ばれている。勝のすぐわきに木のテーブルがあって、電話がのっている。勝の兄貴分に当たる大男は、ここを出て行く時、勝の肩をポンと叩いて、こう言ったのだ。「いいか、勝、こいつに逃げられないようによく見張っているんだぞ。俺はボスと、こいつをどうするか相談して来る。結論が出たらこの電話で知らせる。『ズドン、と一丁やっちまえ』と言ったら、遠慮なく引き金を引くんだぞ、分かったな?」勝は緊張した面持ちで肯いたのだ。男は、組織の会計係をやっていて、かなりの金をごまかしたのだ。それがバレたので、命はないものと半ば諦めていたのだ。青くなっていたのは、むしろ勝の方で、何しろまだ若くて、人を殺したことないからだ。そして、電話が鳴った。「もしもし?・・え?・・もりそば二つ?・・ふざけるな!どこへかけてやがる!」と来た。間違い電話だ。また電話が鳴る。「もしもし。・・・・・・わ、わ、分かりました!」勝が受話器を置くと、「来たぞ!『ドンと一丁!』ってな。・・・か、か、覚悟・・・しろ・・・」しかし、勝は急に喘ぐような声を上げると胸をかきむしるようにして、ドサッと床へ倒れたのだ。心臓が、悪かったらしい。また電話が鳴った。兄貴分からで、男をボスのところへ連れて来いとのことだ。さっきの勝が出た電話は、間違い電話だったのだ。皆さん、間違い電話、何て言ったか、もう分かりますよね!
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