窓からの眺め(文藝春秋)

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ある男が、高級住宅地の屋敷に案内されてきた。都心に近いわりに、異例の静けさだ。近くに外国の大使館もあるらしい。案内されて屋敷は、この辺でも、また特別に広い屋敷だ。ほんの二年前まで、ここはちゃんと人が住んでいたらしい。前庭の広さ、車が七、八台停められる。建物の方は、二階建てだが、普通の家の三階ぐらいの高さがあるし、幅だって、大したもんだ。建ったときは、白亜の豪邸だったが、今はくすんで来ているが、これはこれで、また違った味が出てきている。ホールは、二階まで吹き抜けになっていて、正面の両開きのドアの先が、居間だ。居間は、大した広さで、本物の薪をたく暖炉がある。その正面が庭で、ちょっとした運動会だって開けそうな広さだ。庭には、所々に照明があり、夜のパーティーに点灯される。パーティーでは、テーブルが円形に並べられ、それに食べ物、飲み物が、一流ホテル並みの豪華さで、並べられ、テーブルで囲んだ、広い円の中では、音楽に合わせて、みんなが踊るのだ。この庭でのパーティーこそ、この家のシンボルみたいなものだったのだ。その意味では、ある晩のパーティーで、いわばこの家の終わりを告げたらしいのだ。ホールから階段を上がっての二階には、どれもゆったりとした寝室があり、相当な大家族でも、充分に住めるものとなっている。もし階段の上り下りが面倒なら、一階にも使える部屋がある。この二階の上に、もう一つ、屋根裏部屋があるという。屋根裏部屋は、ずっと広く、天井だって、少し屋根の形に沿って低くなっているが、窓の所でも、頭がぶつかるほど低くはない。天窓が広くとってあって、とても明るいが、普通の窓は、一つしかない。窓から外を覗くと、のっぺりとした隣の家の壁しかなく、上を見上げれば、かすかに空が見え、下に目をやると、茂みが見えるだけなのだ。つまり、その窓は、どこからも、誰からも見られないようになっているのだ。この屋根裏部屋は、ベットカバーの模様とか、ファンシーケースの絵柄から、女の子の部屋らしいのだが、他にあれだけの部屋がありながら、屋根裏部屋を何故使っていたかは、なぞなのだ。いったい何があったのでしょうか? 過去に遡り、話が語られるのであるが、読んでいて、結末が想像できました。他の作品は、ほとんど内容を忘れていてしまってますが、本作品は、昔読んだときの衝撃で、覚えていたのでしょう。

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