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◆三毛猫ホームズの感傷旅行
片山刑事が、公園のベンチに座っている。ポカポカと暖かくて、いい気持ちだ。すると「おい、片山!」と声をかけられた。ある事件で顔なじみになった刑事だ。刑事は、女を尾行しているのであるが、腹をこわしていて、トイレに行くので、代わりに女を監視するように頼まれた。女は、男と待ち合わせをしているので、すぐには動かないという。刑事が、トイレに駆け込んでいく。女は、赤いスーツ姿なので落ち着いて見えるが、せいぜい二十四、五というところで、ちょっと童顔だが、なかなかの美人だ。そして、お約束通り、赤いスーツの女が、パッと立ち上がり、足早に歩き出したのだ。「おい!困るじゃないか!もうちょっと待っててくれなきゃ」との、無言の訴えも、むなしく、赤いスーツの女はどんどん歩いて行ってしまう。刑事は、一向に戻ってくる気配がない。仕方なく、片山刑事は、赤いスーツの女の後を追って駆け出すのだ。話は変わって、晴美と石津刑事、そして、三毛猫ホームズが、列車に乗っている。晴美の同窓会の旅行で、女ばっかり十人近くが、温泉場へとくり出すところだ。石津刑事は、もちろん荷物持ちだ。(ちょっと、無理があるが、しかたない) お約束通り、そこに片山刑事が現れる。そうです、赤いスーツの女を尾行して、列車に乗ったのだった。そして、赤いスーツの女が、酔っ払い三人組に絡まれ、片山刑事と石津刑事が、酔っ払いを追い払い、知り合いになり、これまた、お約束通り、晴美たち一行の同窓会に、赤いスーツの女が飛び入り参加することになる。そして、三時間にも及ぶ大宴会が終了し、解散。片山刑事と赤いスーツの女が、二人っきりになる。「私のこと、何もお訊きにならないわ」と、赤いスーツの女が切り出す。「人は色々事情があるからね」と片山刑事。「私・・・・逃げて来たんです」「私、夫を殺したんです」ときた。そこへ、ドタドタとパンツ一枚の石津刑事が、飛び込んできた。「今、大浴場へ行ったら、男がお湯に---」「服を着たままなんです」「死んでいるんです」と言う。来ましたねー事件。赤いスーツの女とのかかわりは如何にって感じ?
『シリーズ登場人物』
◆三毛猫ホームズの優雅な生活
五十がらみの、なかなか上品な婦人が、晴美を訪ねて来た。着ているものも、それにふさわしく高級品らしかった。「うちの主人は、ちょっとした服飾メーカーの社長なんだけど、今、コマーシャルのイメージ作りにぴったりするようなイメージ・ガールを探しているの」「前から、あなたのことは、ここの講師の先生や事務の方から聞いていたのよ」「で、主人にも話してみたんだけど、それもユニークでいいだろう、ということになって。---何といっても、タレントさんなんかではもう新鮮な感じがしませんでしょ?」と来た。晴美は、椅子に座り直して、ピンと背筋を伸ばし、髪の乱れなどをちょっと手で直して「で、そのイメージガールに・・・・」「ええ、あなたの飼っている猫ちゃんに、ぜひ出ていただきたくて」晴美は、椅子から落っこちかけたのだった・・・。晴美と三毛猫ホームズが、一流ホテルにやってきた。メーカーのファッションショーのイメージ・ニャンコの仕事だ。ホテルのロビーの中央に、シンボルタワーよろしく置かれている大理石の台の上のクッションの上に、三毛猫ホームズが、優雅に寝そべるのである。「まあ、可愛い!」「いい猫ね。毛並みがこんなにツヤツヤしてきれい!」「とってもお利口そうな、いい顔しているわ」と、大人気なのだ。そして、社長と夫人がやってきて、夫人が社長を晴美に紹介した。「やあ、こりゃどうも」「僕なら、こちらの飼い主の方を見ていたくなるな」「まああなたは、片山さん、気を付けてね、この人は女の敵なんだから」と来た。そして晴美が、化粧室に行くと、見知らぬ女に「やめときなさいよ」「悪いこと言わないわ、あの男に近づかないことね」「何の話ですか?」「とぼけたってだめ、さっきから、社長とこっそりしゃべっているじゃないの」そして「社長の恋人は、売れっ子のモデルで、今日も出演しているわ」と来た。なるほど。そしてどういうわけか、片山刑事が現れる。さあ、今回は、どんな事件なんでしょうか?
◆保健室の午後
「また来たのね」「今度は何? 頭痛? 腹痛? それともつわり?」「今は何の時間?」「---数学」「ああ、なるほどね」「数学性の腹痛だ。そうなんでしょ?」「だって、本当に痛いんだもの・・・」ここは、学校の保健室なのだ。いたよね、保健室女子。「用事があって出かけるのよ。あんた、留守番してて」と保健室の先生。「三十分ぐらいでもどるつもりだけどね」と、保健室を出て行った。保健室女子は、固いベットに横たわっていると、ガラッと音がして、保健室の戸が開き、パタ、パタ、とサンダルの音がした。保健室女子は、目をつぶった。寝たふりをしたのだ。他の先生だったら、あれこれ訊かれてうるさいのだ。入ってきた誰かは、ちょっと足を止めた。保健室女子がいるのに気が付いて、眺めている、という様子だ。それから、眠っていると信じたらしく、机の方に歩いて行った。その誰かが、保健室の先生の机の上をかき回すのを、保健室女子が聞いていた。何をしているのかしら?---正直なところ、ちょっと目を開けて、誰なのか見てみたい気がした。しかし、そうする前に、その誰かは、足早にパタパタとサンダルの音をたてて、保健室から出て行ってしまったのだ。保健室女子は、そのまま目をつぶっていた。別に眠かったわけではないのだが、目を開けるのが面倒くさかったのだ。そして、いつの間にか、ウトウトしたのだ。「---こら、起きろ!」揺さぶられて、保健室女子は、ハッと起き上がった。「もう休み時間だよ」と、親友。三十分以上寝てしまったのだ。保健室の先生は、まだ戻っていない。すると、ガラッと音がして、保健室の戸が開き、保健室の先生がいたが、不意に体が大きく揺らいだ。そして、保健室の先生は、前のめりに、よろけるように入ってきて、そのまま、床にパタっと突っ伏した。そして、保健室の先生の白衣の背に、赤い模様が広がりつつあった。血だ、血が、どんどん、その面積を広げていくのだ。事件発生。三毛猫ホームズたちは、まだ出てこない。どうなるのだろうか?
◆三毛猫ホームズの同窓会
片山刑事の高校の同窓会が行われる。この同窓会に、晴美、三毛猫ホームズ、さらに石津刑事が同行するという。なんでやねんなんですが、まー仕方ない。片山刑事の年代になると、そこそこ出世している人もいると思うが、片山刑事は、まだ平刑事、同窓会なんて出たくないんですが、晴美が勝手に出席通知を出してしまったのだ。ここもおかしいが、仕方ない。「片山さんの初恋の人は来るんですか」と、石津刑事。いい質問ですね。学生時代、色々な思い出がありますよね。「片山君!片山君でしょ!」と、最初に声をかけられたのは、凄いメガネをかけた、丸々と太った女性だ。「あの---失礼ですが---」と、おずおずの片山刑事に「やだぁー、分かんないの?まあ、ちょっと太ったからね」と女性。女性は、三人の子持ちで、「一人、子供生むたびに五キロずつ太ったの。それきり元に戻んないのよ」とのことだ。分かるわけがない。女性って、みんなこうなんですかね? 私の家内も三人産んで・・・・。「---今日、彼女来るんですって。知ってる?」と女性。「彼女?」「わがクラスのマドンナ」マドンナね、いたよね。会場に入っていくと「---あれ誰なの?」と、十人近い女性が集まっていて、その中心になっている男を見ての、晴美の問いだ。「クラスきっての秀才だよ。ちっとも変わってないな」と、片山刑事。確か東大にストレートで入り、一流企業に入ったはずだ。いかにも、洗練された服装がよく身に合っている。今度は「ねえ、あの人、会場を間違ってんじゃないの」と、晴美。何だか、くたびれ切った背広に、ヨレヨレのスポーツシャツ、靴も何年はいているのか、底がすり減っている感じ、中身もの方も、老けた男で、どう見ても五十近く見える男が、壁のところに座っている。誰だったろう?どこかで見た顔だ。しかし、片山刑事は、思い出せない。そんなんで、同窓会が進んでいくのであるが、どんな事件が、待っているのでしょうか?
◆三毛猫ホームズの奇跡
「本当にもう、頼りにならない人ばっかりなんだから」「俺のせいじゃない!この地図が間違っているんだ!」「でも、二時間ぐらいの遅れで着きそうですよ」・・・・。分かりますね、何時もの通りです。①晴美のボヤキ、②片山刑事の言い訳、③石津刑事のフォロー。みんな絶好調ですね。何とか休暇を都合して、三人と一匹で、湖畔の洒落たホテルに向かっているのだ。カーナビがない時代、大変だったですね。私も家内といつも地図見ながら言い争ってました。何だか、道が狭くなってきたとき、晴美が、突然、アッ、と声を上げて「停めて!」と叫んだ。片山刑事が、急ブレーキ。「誰かいたのよ」と晴美。すると、女が、車へと駆けよって来て「車が故障してしまって---お願いします!乗せて行ってください」「急ぐんです。どうしても大急ぎで、〈聖地〉へ行かなくちゃならないんです!」とのこと。「セイチ?」と片山刑事。分かります、怪しいですね、聖地に行くなんて。山の上に聖地があるらしい。そこにいる教祖様が奇跡を起こすらしい。やっぱりね、こんなことだと思いました。四歳の息子が、心臓が悪くて、もう助からないと言われているが、それを教祖様が、助けてくれるというのだ。なるほどね。車一台がやっとという細い道を辿っていき、急坂を上がり切ると、いきなり、広い開けた場所に飛び出した。広場のように平坦になった場所の中央に、モダンな社があり、その前に、井戸のような枠がしつられてあって、その中からは、炎が吹き上げていた。すると、建物のドアを開け、一人の男が出てきた。教祖様だ。女が、札束を教祖様に渡した。「家も土地も、総て手放して、お金に換えました」「洋服や、宝石も?」「はい」「結構です」「あらゆる俗世の誘惑を断ち切る決心をなさった、あなたの信仰の力が、お子さんを救うのです」「では、この汚らわしいものを、火で浄めましょう」と、教祖様は、札束を、炎の中へと、ためらいもなく投げ込んだ。これで本当に息子さんが助かればよいのですが、そんな訳ないですよね。そして、湖畔の洒落たホテルで男が殺された。殺された男は、だれでしょうか?
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