遅れて来た客(光文社)

【広告】スポンサーリンク


◆家主
五階建ての、細長い、古い石造りのアパート。大学生のカップルが、このアパートの側を歩いていると、一番上の階の窓が、突然砕けた。そして、一人の男が、飛び出して来た。もちろん男は、路上に叩きつけられ、亡くなった。野次馬が集まってきて、救急車が来て、パトカーが来た。カップルの男子大生の方が、「係わり合うと面倒だよ」女子大生を促し、離れるときに、女子大生が、振り向いて、アパートを見ると、なんと、壊れている窓は、四階なのだ。男が、飛び出して来たのは、確かに一番上の五階だったのだ。この女子大生、可愛い顔立ちだが、顔に似合わず、男まさりの冒険心を持っていて、いささか無鉄砲なのだ。この事件を放っておくことが、できない。女子大生は、丁度今住んでいるアパートを出なければならず、なんと、事件があったアパートの四階に、引っ越してしまったのだ。不動産屋に連れられて、アパートを見て、即決し、五階に住む家主に、挨拶に行くと言うと、「やめといた方がいいですよ」「ここの家主は変わり者なんです」と言われたのだ。ともかく、女子大生は、このアパートの四階に、引っ越してしまうのだ。このアパート、各階一部屋で、一階に雨の日でも、ジョギングをする男、二階に寝たきりのお婆さん、三階にボディビルダーらしい筋肉マンの男、五階に家主が住んでいる。そして、女子大生が、アパートに引っ越してから、女子大生の様子が、おかしくなってくるのだ。毎日、寝不足で疲れているようで、今まで休んだことのない講義を、サボるようになったのだ。更に、女子大生が、深夜に、ディスコで、酒を飲んでいたとの目撃情報が入ったのだ。ボーイフレンドの男子大生が、女子大生の友達に頼んで、アパートに様子を見に行くように頼んだ。結果、やはりおかしいのだ。夢うつつみたいな状態で、夜中に出歩いたのを覚えていないと言うのだ。いったい何があったのだ。そして、ボーイフレンドの男子大生と女子大生の友達が、女子大生を救うべく立ち上がるのだ。そうそう、自転車の少女が襲われた事件がありましたが、何だったのでしょうね?

◆家庭教師
記憶にありませんでしたが、良い作品でした。旦那が、残業残業の中、やっと休みを取って、家族旅行に出たのだが、期待外れの踏んだり蹴ったりの旅行になってしまった。そんなんで、雨の中、旅行から家に帰る車の中で、夫婦喧嘩が繰り広げている。後部座席には、十一歳の長女と八歳の長男が、眠り込んでいる。「旅行がつまらなかったからって、それが俺のせいなのか!」「誰がそんなこと言ったのよ!」「じゃ、さっきから何だかんだと言っているのは何のつもりなんだ!」・・・・・・・、旦那の運転が疎かになる。その時、親も含めて周り公認カップルの女子大生が、道路の真ん中で立ち竦んでいたのだ。間に合わなかった、女子大生は、空中高く跳ね飛ばされた。「逃げるのよ」妻が言った。旦那が逃げようとすると、激しく窓を叩く音がした。女子大生のお相手の男子大生だ。「逃げるのよ!走らせて!」 旦那が、アクセルを踏み込んだ。男子大生は、ドアにしがみつく。結局、その男子大生も、車にひき殺されてしまうのだ。話は変わって、女子大生が、夏休みに家庭教師のアルバイトをすることになった。両親が、海外旅行中、その家に住み込みで、子供二人の面倒を見るのだ。家のことは、家政婦さんが全部やってくれる。午前と午後、決まった時間に勉強をさせるだけなのだ。女子大生は、結構なアルバイト代なので、何かあるのではないかと心配したが、両親は、俗物の典型って感じだだけど、子供たちは本当にいい子である。家政婦さんもいい人で、何事も良くやってくれる。一週間経った。勉強のスケジュールが多少遅れているが、何も問題なく過ぎた。そんなある日、夜中に目が覚めると、モーツァルトが聞こえてきた。誰だろう?居間に降りていくと、「何を怒っているんだい」「分かっているでしょう」「仕方ないじゃないか」「それじゃ済まないわ」・・・・の声がきこえるのであるが、口調も、話し方も、話の中身も、若い男女のものだったのだ。しかし、声だけは、聞き覚えがある声なのだ。いったいどういうことなのか? みなさんは、この家、誰の家かわ分りますよね。そう、冒頭の家族の家なのです。こういうことって、あるんですね。

◆遅れて来た客
「遅れてきた客」は、話の内容は覚えていませんが、題名は記憶のある作品です。多分、「遅れてきた客」の文庫本には、3編の中編小説が収載されていて、今回再読しましたが、三編とも良い作品だったので、三編まとめて、この題名が、記憶に残っていたんだと思います。三十八歳の会社の課長が、会社のビルの屋上から飛び降りて、自殺した。妻に訊いても、自殺の原因が分からないという。会社の同僚に訊いても、自殺した当日は、課長は自殺する素振りは見えずに、逆に何時もより、朝から機嫌が良かったとのことだ。自殺した課長の、九歳の一人娘は、家でのパパは、あんなに楽しそうで、幸せそうで、自殺の原因は無い。会社で、辛いことが、死にたいくらいいやなことがあったのに違いないと、仕返ししてやらなきゃ、と誓うのだ。そして、自殺した課長の通夜が始まった。課長の妻は、夫が浮気をしているのに気付いていた。通夜に来た女性を見ていて、二人のうちのどちらかだわと、絞り込んだ。一人は、近所の奥さんで、奥さんの夫と一緒に焼香したが、奥さんが、肩を振るわせて泣き出したのだ。もう一人目を引いたのは、夫の同僚の女性だ。同僚の女性が、焼香しているときに、彼女の、夫への想いがほとばしるのを見たのだ。九歳の娘は、通夜の集会所の建物の陰で、通夜に出入りする人達の様子を見ていた。そして、見たことのない女性が、娘の側で止まって、ハンドバックからハンカチを出して、目に押し当てた。泣いているのだ。そして、女性の名を呼んで、近付いてくる男がいた。見たことのある男で、パパの会社の男だ。「僕を責められても困るんだ。あれは---」「上からの命令だった。もちろんそうでしょうね。でも、許されることの限度ってものがあるんじゃありません?」「しかたないじゃないか、俺にだって家族ってものがある」・・・・・の会話をするのを、娘が聞いた。そして娘は、夜中に、パパが安置されている集会所に来て、マンガに出ていた、死人をよみがえらせる呪文を一生懸命に唱えたのだ。だめか・・・「役に立たないんだから!」と、マンガの本を投げ出した。そして、娘が立ち上がったときに、不意に明かりが消えて、風が吹き抜けていったのだ。呪文成功? そして、パパの復讐は、如何にだ??

コメント