泥棒よ大志を抱け(徳間書店)

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◆毒を仰げばグラスまで
道田刑事が、べろんべろんのところから話が始まった。真弓が捜査の帰りに、道田刑事に「ちょっと上がって行ったら?」の誘いに乗り、淳一の「一杯付き合えよ」の誘いに「じゃ、ちょっとだけ」と答えた結果が、これだ。気持ちは分かります。私も何回べろんべろんになったことか。先日も本棚を倒してしまいました。それはさておき。今回は、家族三人が殺された事件だ。家のダイニングキッチンのテーブルで、父親と母親、そして十一歳の息子三人が、毒を飲んで死んでいた。一見心中に見えるのであるが、テーブルの周りに、毒を飲んだ器が無く、キッチンの水切りに、洗い上がったグラス二つとコップ一つが置かれていた。毒を飲んでから、グラスなどを洗う余裕はないので、三人が死んだ後に、誰かがグラスなどを洗ったと判断されたのだ。ところが、不思議なことに、家のドアや窓の鍵が、全部内側から閉められていて、密室状態なのだ。犯人はどこから逃げたのか? 発見者は、母親の姪に当たる娘であるが、夜中にこの家を訪ねてきて発見したらしい。そんな夜中に何をしに来たのか?怪しんだ淳一が、学校帰りの娘の後をつけると、娘が、キャバレーから出てきた男に、ナイフを持って向かって行ったのだ。失敗!男の取り巻きに捕まり、男から「五体満足で帰すんじゃねえぞ」と指示される。さて、淳一さんどうします? あれ、真弓の発砲が、なかったな? 最近止めたのかな??
『シリーズ登場人物』

◆長いものにはフタをしろ
お金持ちの美術品の個人コレクションの展示会の話だ。淳一は職業柄、美術品に詳しく、良く展覧会に出かけている。今回も、太さ三センチで、高さ5メートルの棒に彫刻を施した美術品が展示されるらしく、興味を示し、展示会に行ったのだ。その棒の周りに人がびっしり刻まれていて、刻むのに相当な体力が必要なのに、作者が女性と知って驚く。淳一が、繁繁とその棒を見ていると、「興味がおあり?」と若い女性に声をかけられた。この棒の作者だ。そして、この棒は、未完成だと告げられる。最後の一人が、まだ刻まれていないらしいのだが、今回の展示会のお金持ちがパトロンで、未完成なのに無理やり展示させられたらしい。作者は、死ぬより辛いという。要は、最後の章を書き上げていない本や、ラスト・シーンが撮影していない映画みたいと言うのだ。そうなのかな? 良く絵描きさんは、自分の作品に完成が無いと聞きます。絵に色を付けていくのだが、どうなったら完成か、答えがないのだ。適当に自分で妥協するしかないらしい。なるほどと思いますが、彫刻はどうなんですかね。さらに、作者はガンで、余命が無いらしく、棒を完成させてから死にたいというのだ。もちろん、淳一の出番ですが、パトロンのお金持ちが、何者かに殺されてしまうのだ。棒の作者が容疑者として、真弓と道田刑事の事情調査を受けることになる。どうなるのでしょうか? そして棒の完成は如何に??

◆踊る泥棒、見る泥棒
淳一が珍しく夕方家に帰ってきた。しかも玄関から入って来たのだ。どうしちゃったんだろう? 具合が悪いのかな?? すると、真弓と道田刑事が取っ組み合いをしていたのだ。道田刑事がドシンとすっころぶと、すかさず立ち上がって、真弓に組みついて行く。ドタドタと二人してもつれあうように横へ歩いたと思うと、また道田刑事が足をもつれさせて、ひっくり返る。淳一が「相撲大会?」と聞くと、「失礼ね!」「ワルツのステップを練習してたのよ!」との回答だ。どうも財閥のパーティーがあり、そのパーティーで財閥の当主を護衛するらしい。そして、いかにも警察ですって顔でいてほしくない、って希望なんで、ワルツでもおどろうかってことらしい。警察も大変なんですね。財閥の当主というのは、八十歳の老婦人で、夫の死後引き継いだ財閥を何倍にも大きくしたらしい。その財産を狙って、三人の孫たちが、当主の命を狙っているらしいのだ。そして、当主から、一人で出席するのもおかしいので、パートナーにも出席して頬しいとの依頼で、淳一もパーティーに出席することになるのだ。そうだよね。そして、パーティーが始まると、淳一が当主の孫の女性に、踊りに誘われ踊っていると、「後で、二人きりで話したいことがあるの」と、図書室に来てと誘われたのだ。おいおい、真弓に射殺されるぞ! 当主の命と淳一命、さてどうなるのでしょうか? 

◆火のない所に腹は立つ
真弓が道田刑事とラーメンを食べていると、「---冗談じゃねえよ!」と店の主人の声。見かけは、ごく当たり前のサラリーマンが、空の器と皿を前に、至って行儀よく座っていた。「金がないって?」「それを分かってて、注文したんだな?」の主人に、「その通り」と男は平然と肯く。「じゃ、無銭飲食で、交番に突き出すぜ! それでもいいのか?」に、「うん、やってくれ」ときたもんだ。その後なんだかんだあって、面倒になった主人の「さあ、とっとと出ていけ!」に、「じゃ、お言葉に甘えて」と、男は店を出ていく。堂々との無銭飲食、これいけるかも? これに対して、真弓が、男の後を追って店を飛び出す。道田刑事も後に続くと、駄目だよね、「こら!貴様も食い逃げか!」と店の主人に捕まった。まあさておき、無銭飲食の男は、真弓の初恋の男だったのだ。真弓が、男の話を聞くと、「実はね、僕は殺されることになってるんだよ」「女房に」「女房、浮気、愛人、そして生命保険。---これでわかるだろ?」と来た。三年前に友人の借金の保証人になったが、その友人が行方をくらまして、その借金の肩代わりに、土地と家を手放して、夫婦仲が終わったらしい。そして、生命保険殺人になったらしいのだ。そして、その夜、無銭飲食の男の住むアパートが火事になり、男の焼死体が見つかったのだ。真弓が、無銭飲食の男の奥さんから話を聞くと、あまりに白々しく、哀しげな未亡人を演じているので、頭に来て、保険金の話をすると、「いくらお金をもらっても、主人は戻りませんわ」と涙ぐむのだ。さて真相は如何に? おまけ、「部屋の置くへ進んで行った。」というくだりがありましたが、誤植ですかね?

◆二度あることは散々だ
俳句を嗜んでいた男が殺された。この男、俳句のとても大きなコンクールで、一等になったことがある。大した賞金が入ったわけでもないが、近所の方々に、何かお菓子とかを配ったりして、本当に嬉しそうだったのだ。ところが、有名な俳句の先生のものと全く同じで、盗作だったことになり、一等が取り返えされ、ご近所にも顔向けができなくなってしまっとのことだ。夫婦仲もよかったが、それがきっかけになり、奥さんが出て行ってしまったらしい。その出て行った奥さんに話を聞くと、男は、盗作だと言われた有名な俳句の先生に殺されたと言うのだ。男は、その俳句の先生に教わっていて、コンクールに出す俳句を、先生に事前に見てもらっていたとのことだ。コンクールの審査は、時間がかかり、結果発表の前に、俳句の先生が、男の俳句を自分の俳句として出してしまったというのだ。もちろん、俳句の先生が男の俳句を盗作したと抗議したのであるが、俳句の先生は大物で、握りつぶされてしまったとのことだ。んんん、まてよ? この男、先生に盗作犯人にされて、ご近所にも顔向けができなくなり、奥さんが出て行ってしまったのであれば、悲観して自殺するとか、俳句の先生を恨んで殺すとかなら分かるが、なぜ自分が殺されたの? 訳分かんない?? 更に出て行った奥さんに話を聞くと、男は、先生より自分が先に俳句を作った証拠をつかみ、俳句の先生をゆすっていたらしいのだ。そのゆすりに耐えられなくなり、俳句の先生が男を殺したというのだ。うーん、どうなんでしょうか? この解決に向け、何と淳一が、アルバイトにでることになるのだ。

◆金は天下の回し者
商会の社長が殺された。この社長、平気で計画倒産をやって、しかも負債も支払わない、という図々しい社長で、この社長を恨んでいる人間は何百といるらしいのだ。殺されても当然らしいのだが、事情を知らない道田刑事は、「全く、こんな弱々しい老人を殺すなんて、犯人は人間じゃない!」なんて言っているのだ。この社長、もともと心臓が弱かったらしく、軽くアッパーカットを食らっただけで、ショックで心臓が止まったらしいのだ。見つけたのは、社長の屋敷に勤めている若い家政婦なのであるが、倒れている人を見たら、普通救急車を呼ぶはずが、いきなり110番したらしい。怪しい? この社長の長男夫婦とその娘、次男夫婦に会ったが、みんな、あんまり悲しそうに無いので訊くと、「そりゃね、こっちは一日も早くこの日が来るのを待っていたんだから」なんてひどいことを言っている。どうも社長は、長男、次男たちを、屋敷の離れに住まわせているのであるが、凄くケチなのに、いつも恩着せがましく、威張ったらしくしていたようだ。この社長、持っているお金を銀行などに預けないのが有名で、寝室の金庫に金を入れていると、長男、次男たちは思っていたが、金庫を開けたが、金目の物が入っていなかったのだ。長男、次男たちは、屋敷の中をひっくり返して探したのであるが、見つからない。財産はどこに行ってしまったのか? 殺人の犯人は? そして怪しい若い家政婦は?? しっかし、淳一が、警察が調べている社長の屋敷に登場するのであるが、真弓が忘れた拳銃を届けに来たとのことだ。拳銃大好きな真弓が忘れるはずないのに、ちょっと苦しくない?

◆牛に引かれてお礼まいり
TVで大評判の美牛の話だ。美牛、もちろん牛だ。この牛が、チラッと流し目を送り、それが凄く色っぽいので、人気があるらしい。意味が分からない? よくこんなことを赤川次郎は考えるなって思ったら、ネットで「牛の流し目」で検索したら、写真や絵画が沢山で出来ました。牛の流し目って人気があるんですね。この美牛の持ち主がもめているので話を訊くようにと、捜査一課長から真弓に依頼が出た。話を訊くと、元々の持ち主が賭け事好きで、娘の旦那と、サイコロの丁か半をやっていて、最初は持ち主が勝っていたが、その内負けだして、---とうとう美牛を賭けてしまい、負けて、娘の旦那に美牛を取られたとのことだ。それで「いかさまだ!サイコロに、細工がしてあったんだ!」などと、もめているのだ。その後、娘から、亭主が美牛に殺されたと連絡が入る。TVの出演でTV局に来ていたのであるが、娘が美牛へやる水を持ってくるため、旦那を残して美牛から離れて戻ると、旦那が倒れていたとのことだ。検死の結果、相当な力の打撲で、牛にやられらと考えられた。旦那は、牛の扱いに慣れていなく、やられたらしいのだ。ただし、娘の質問に答える態度が凄く曖昧で、何かを隠しているように思わせられたのだ。しばらくして、娘が真弓を訪ねて来た。真弓が「お父さんを見かけたんでしょう、あのTV局で」と訊くと、娘は「どうしてそれを---」と来た。さらに、娘の父親が登場し、「やったのは、わしだ。あの男が許せなかった」と来たもんだ。うむー、何か怪しい? 真実は如何に??

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