ト短調の子守歌(新潮社)

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「ト短調の子守歌」は、内容は覚えていませんでしたが、心に残る作品の一つでした。改めて読んでみて、良い作品だとつくづく感じました。十七歳の少女のアイドルスターの話であるが、芸能界の実態を見事に描いているし、事件が起きた時の警察とマスコミとの関係などこと細かく描いていて、ふーーんそうなんだと大変勉強になりました。このアイドルスターの熱狂的ファンの男が、「アイドルスターに会わせろ」と、アイドルスターのクラスメイトを人質に、アイドルスターの通う高校に立てこもる事件が発生した。この事件にあたる現場責任者の警部、その警部の部下、アイドルスターのマネージャー、アイドルスターの芸能事務所の社長、社長の愛人、アイドルスターが逃げ込んだ家の大学教授、そこのお手伝いさん、人質になったクラスメイト、そのクラスメイトの親たち、アイドルスターの母親、マスコミたち、などなどが事件解決に向けて動くのであるが、自分のことしか考えない、自分さえ良ければいいのだとの考えが前面に出ている人たちが多く、やっぱりそうなっちゃうよねっと、感心させられたり、あきれたり、面白いです。大学の教授だけは、さすがに哲学を研究しているだけあって、冷静に状況を分析し、現場責任者の警部へアドバイスをするのだ。そしてこのアイドルスターだ。自分では何もできず、社長やマネージャーの言いなりになると思いきや、自分の考えを持ったしっかり者で、クラスメイトたちのことを考え行動するのだ。さらに、赤川次郎の描く警察の人たちは、間抜けでいい加減な人物が多いのであるが、ここに出ている現場責任者の警部は、責任感があり行動力もあり、頑張ってくれるのだ。読み終わって、よしよしの作品ですが、その後皆さんがどうなったのか気になって仕方がありません。続編って出てないよね? そういえば、この「ト短調」って、モーツァルトのピアノ協奏曲第十八番から来ているらしいので、いっちょ聞いてみるか?

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