払い戻した恋人(集英社)

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いやー、本作品面白かったです。二十四歳OLのドケチな姉ちゃんの話だ。一か月だけ無料で、というのを各紙くり返し、大体只で新聞を取っていたり、最初に熱いお湯を入れて、追い炊きを少なくするのと、ぬるめのお湯を追い炊きしながら入れるのと、どっちがガス代が安いか、必死に計算したり、「安い」という文字に、極度に敏感だったり、大奮発してドリップで淹れたが、粉は少なめ、お湯多めで、アメリカンをさらに薄くしたような味だったり、入院の経験がない、医者にかかると、お金がかかるというわけで、体の方もケチにできているらしい、などなどだ。恋人もいないのは、男嫌いではなく、預金通帳を眺めて、その額が着実に増えて行くのを見ることが、今の何よりの楽しみであるからだ。いやー、素晴らしい!この姉ちゃん大好き!!自慢じゃなしが、私もドケチなんです。とにかく無駄が大嫌いで、無駄をしている家族と、いつもぶつかってます。そんな姉ちゃんが、ロマンスシートの映画の切符をもらった。一緒に行く相手もいないのに。もちろん、ロマンスシートの半分を払い戻せと掛け合ったのであるが、ダメだった。しかたなく、見知らぬ青年に声をかけ、一緒に映画を見たのだ。映画の後に、青年からお茶に誘われ、もちろん応じたが、そこまでで、名も聞かずに別れたのだ。しばらくしてから、愛人を殺して、犯人が逃げているとのTVニュースを見たのだが、なんと逃走している男が、一緒に映画を見た青年なのだ。そして、会社からの帰りの電車で、犯人の青年に出くわし、青年が住む屋敷に連れていかれてしまう。〈OLの全裸死体、見つかる!---死後一か月〉などとの新聞の見出しが脳裏に踊った。ところが、青年は自分は無実で、青年の無罪を立証して欲しいとたのまれた。立証すれば、なんと一千万円払うというのだ。もちろん、ドケチな姉ちゃんが、こんなおいしい話を断るはずがなく、引き受けたのである。ドケチな姉ちゃんの成功を祈ります!

【昭和】木賃宿

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